2+1は……

~解け始めた時間~

その夜、まひるは夢の中で1人の男の子と遊んでいる子供の頃の夢を見ていた。韓国人の父と日本人の母の間に産まれたその子は、いつも虐められていた。まひるはその子と仲良くなり楽しそうに遊んでいるのだ。しかも、家が隣同士、2人はいつも隠れ家を作りお互いのおもちゃを持ち寄り隠れ家で遊んでいた。

ある日、何時もの様に隠れ家で遊んでいたら、大きな音と共に隠れ家は壊れ、酷い熱さを感じた。気がつくと、男の子は子供用プールの水に浸した濡れた布をまひるに掛けて、まひるを守るかの様に覆いかぶさっていた。まひるは、泣きながら目が覚めた。夢にしてはリアル過ぎた。身体の震えが止まらない。

あの男の子は……凛だ!

この家の二階に居る凛だった事に気がついた。凛がまひるを助けてくれた事に気がついた。そして、凛があの時助からず、自分だけが助かった事に気がつき、涙が溢れ出した。まひるは、凛の部屋を訪ねていた。まひるがドアを開けると、そこには、握りこぶしを作り、涙を流している凛が立っていた。

凛は、まひるに

「思い出させてごめん」と謝った。

まひるは、凛に抱きつき

「ごめんなさい。ごめんなさい。私だけが……」

と言葉を詰まらせた。

凛はまひるには、思い出させたくなかったのだ。凛は今までの事を思い出していた。まひるが思い出さない為に、イジメられない様に、危ない目に合わない様に、まひるの夢が叶う様に、受験勉強で、寝込んでしまわない様にいつも、まひるを守ってきていた。

しかし、まひるの恋愛だけは、見守るしか出来なかった。その日まひるは、凛にもたれながら、泣きながら寝てしまった。そんなまひるに、凛は優しく抱きしめ自分のベッドにまひるを寝かせた。