第二章・記念試合 ~二度目の卒業式~

二〇〇七年三月十日(土)

先輩方が嬉しそうにしていた。

こうして今日、記念試合が出来ることになったのも、一年以上も前から、数名しか集まらないときでさえ練習を重ねてきた、二回生の加藤(昭)先輩、川出先輩、四回生の三浦先輩、修三先輩、井村先輩、上床先輩方々などの地道な努力、そして強い思いがあったからこそだ。

皆の歓談が終わったところで紅白にチーム分けがされた。エンジのユニフォームと、白のユニフォームが用意されていて、まさに紅白だ。俺は直と一緒の白チームとなった。直のヒザも大分よくなったようだ。試合には出られそうだ。

若いメンバーを中心にポジションを決めた。元フッカーの俺もさすがにフォワードは無理と思いウイングになった。試合前に作戦を練り軽めにサインプレーを行った。上床先輩がレフリーをやるようだ。皆、久しぶりで歳もとっている。スクラムやタックルは手加減して行うように、と試合前に皆に注意をしていた。

ホイッスルが鳴った。試合が始まった。ようやく、この日が来た。ついに実現したな、と感激に浸っていたのもつかの間。ものすごいタックルが目の前で決まった。いきなりスイッチが入った。

「おいおい」

「皆その気?」

やはり血が騒ぐか。手加減など考えていてはいられない真剣勝負となっていた。中途半端なプレーは逆にケガをする。点を取られ取っての展開となった。まだ、俺のところへはボールが回って来ていない。

同点で前半が終わった。フォワードの先輩たちは既にヘロヘロの状態となっていたが、頑張っていた。この日のために、長野から毎回練習に参加していた三浦先輩の活躍が特に目立っていた。二年間の思い入れがある。万感の思いだろう。

後半戦が始まった。フォワードがラック状態でボールを奪い合っている。その状態へ相手チームのプロップが突っ込んで来た。川浦だ。とんでもない1番だった。優に130㎏は越えている体型だ。まるで力士のようだが、ものすごいスピードで突っ込んで来た。ラックが一瞬でつぶれた。うちのチームのフォワードは見事に弾き飛ばされた。すごい後輩がいたものだ。

しばらくラック状態が続いていた。ボールが出た。マイボールだ。  スクラムハーフからスタンドオフへ。そしてセンターへとボールが渡った。一人かわして、もう一人のセンターへ渡った。摑まる。目の前にディフェンスが迫っていた。倒された。

ボールは? 生きていた。俺に向かって飛んできた。フォワードが身体を張ってキープしたボール。そのボールを繋いで、繋いでウイングまで回したバックス。ラックの状態からスロー映像を見るかのように俺までボールが回ってきた。皆、倒れていた。皆、身を捨ててボールを生かしてくれた。

大げさかもしれない。傍目から見ればたかがOB戦。しかし俺たちには、二年間の皆の思いが詰まった記念試合。青春時代の思い出のグラウンド。今日で最後。二度とこのグラウンドでは試合が出来ないのだ。落とせない。このボールは絶対に落とせない。そう思った。俺は皆の思いを受け取った。このボールは絶対ゴールまで持ち込む。