2

ふたりは、不動沢橋を端から端まで往復したあと、また展望台に戻った。

改めて展望台から見る不動沢橋は、壮大で彫刻の女性の肢体のように流麗で、昼下がりの秋の日を受けて神々しく光っていた。自殺の背景や経緯(いきさつ)はそれぞれだろうが、死を決めたときは誰でも、魂の昇華を願って、より壮麗で荘厳な場所を選ぶものだ。

「はぁやっぱ、納得できねぇ」

多門は小さい声でつぶやき、次は周平さんのお家に案内しますと言って、頭を振りながら駐車場に歩いていった。ふたりを乗せたトヨタマークXはタイヤを(きし)ませながら九十九(つづら)折りの坂道を下り、福島市内に戻り、そのまま市内を横切って、また山間部に入った。

「周平さんは、この山さ抜けた太平洋側の大葉町の出身です」

ハンドルを握った多門の話に左沢は無言でうなずいた。

「どげんして周平さんとお知り合いにさなったのですか」

多門が、S字の大きなカーブを抜けたところで尋ねてきた。本署での話では、周平との出会いのところはふれていなかった。

「周平は、私が講師を務めた講習会の受講生でした。三年前のことです。失業者向けにハローワークが開催したもので、期間が四ヶ月と長いものでした」

「そのなかで彼は優秀だったというわけですか」

「受講者には、受講期間中は失業保険の給付が延長されるという特典だけが目当ての人たちも多く、初めのうちは彼もそのなかのひとりでした。しかし、プログラマーの仕事が面白く思えるようになったのでしょうか、途中から俄然やる気が出てきまして、講習会が終わる頃には、ずば抜けた存在になっていました」

左沢は周平と初めて飲んだ夜のことを思い出す。