ガソリン車を作らず、電気自動車しか作っていないメーカーの中で、現在トップにいるのはアメリカのテスラだろう。2020年のテスラの世界販売台数の約3割が中国で、しかも中国の市場開放の象徴として、テスラは中国企業との合弁ではない独資の工場を上海に作って現地生産をしている。

私が30年近く見てきた限りでは決して成熟しているとは言えないが、世界1、2を競う巨大な中国市場は全世界の自動車メーカーの今後の命運を握っているのも間違いないのである。

中国では2035年までに新車は全て電動車にするという。その中にハイブリッド(HV)も含まれた。このことはハイブリッド(HV)では一番先を行くトヨタにとってはとても大きなことではなかったか。もし、電動車ではなくて、ハイブリッド(HV)を含まない電気自動車だけということになっていたら、また世界の自動車メーカーの勢力地図は変わっていたかもしれない。

最近ソニーが車作りに乗り出すのではないかという話があった。

ガソリン車と違い、圧倒的に部品数が少なく、構造がシンプルな電気自動車はベンチャー企業など、思わぬところが開発に乗り出すこともあるだろうし、実際中国では電気自動車を作る会社が雨後の筍のように増えている。

日本でもコストの安い中国で電気自動車を作ろうという会社が次々と出てきている。最近でも大手運送会社が配達に使うクルマを中国製の電気自動車にしようと検討しているというニュースがあった。その電気自動車を開発している会社の考えは、“最終的にはクルマはただの動く箱”で家電だそうである。

現在の日本の家電メーカーがコスト削減のために、中国で生産した家電製品を普通に日本国内で販売しているのと何ら変わりはない。我が国が中国製の家電製品を輸入するのが何の抵抗もなくなったように、外国人カーデザイナーがデザインした中国生産の中国の自動車メーカーの電気自動車が日本に輸入されるようになる日は案外すぐそこに来ているのかもしれない。

ひょっとしたら、運送会社のクルマのような実用車だけではなく、二人乗りの中国製電気自動車のスポーツカーなんてものまであったらどうしようかといらぬ心配をしてしまう。

※本記事は、2022年8月刊行の書籍『1973 青山ココパームス』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。