2 入学試験

「梅が蕾」をつける季節は、柔らかな陽差しに春の訪れを感じる。

日々の天候、気温は衛星から発信されるおかげで、きわめて正しい情報がもたらされる。でも、全く完全とは言い切れない。二月の上旬から蕾をつけ、日に日に「一輪、一輪」花開く梅。宅の玄関にも「紅梅と白梅」。また坪庭には、茶庭に相応しい白梅の木がある。よく陽の当たる玄関先にいち早く咲き始めるのが紅梅だ。

俳人・一茶の句ではないが、これから一輪一輪がその暖かい季節の訪れを感じるのだと思うと嬉しいかぎりだ。

私は朝にまず梅の花を見る。一輪咲いた梅は枯れるでもなく、寒さに耐えながら枝に美しい花をつけている。その生命力。自然との調和。生きとし生ける万物の尊さをしみじみと感じる。

人とは賢くもその反面、弱く儚いものである。人が自ら己の命を絶ったり、信頼を裏切り、皆が悪いことというのをしりながらも、行動してしまう。

平安時代、知識人であり高邁な理想と理念を備え、国の中枢ではなくてはならない存在だった「菅原道真」。彼は多数派の権力者によって九州の大宰府に左遷される。没後、人々から畏敬の念を持って天満宮が建立された。

「東風(こち)吹かば 匂ひおこせよ梅の花 主(あるじ)なしとて春を忘るな」

道真の有名な和歌である。都、北野天満宮には八重一重、紅白様々な梅が植えられ、人は春の希望に心を寄せる。

能に『雷電』という曲がある。主人公は菅原道真。道真をかばいきれなかった時の帝。その内なる「恨みと怒り」が雷の姿となり、内裏の人々に雷光けたたましく襲いかかる物語だ。しかし、心の師であり都の鬼門を守る比叡山の法王になだめられて安寧な場面となり、一曲が終わる。

だが私は、多くの人々に今でも尊敬され、学問の象徴として崇められる道真のその心の内を知るべくもないが、魂が人に災いをなすような人柄ではないと思いたい。

人が生まれ育ち、学問をするべく「入学試験」を受ける。

人は何かに縋ってみたいものなのだろうか……。各地にある天満宮に、是非とも是非とも入学できるようにお参りをする。

紅白の梅が芳ばしい香りをたたえながら花開く季節なのだ。

※本記事は、2018年11月刊行の書籍『世を観よ』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。