【前回の記事を読む】朝起きたらすぐに缶ビールを開け…「アルコール依存症」の恐怖

第一章

そんな中でも、通院は一応続けていました。抗酒薬を飲んで飲酒をすると、とんでもないことになります。抗酒薬とは体内のアルコールを分解できないようにする為の薬です。これを飲めば、お酒を飲めない人がお酒を飲んだような状態となります。酒をひと口飲めば、顔が真っ赤に熱くなり、呼吸や動悸が激しくなり、頭痛や吐き気を引き起こしました。

それでもやっぱり酒はやめられず、薬を飲んで酒を飲み、瀕死になるという自傷行為を繰り返していました。家で一人で気を失っていたこともありました。今考えるとゾッとするような危ない行為です。失禁していたこともあります。あまり思い出したくありませんが、朝起きたら自宅で裸のオカマと寝ていたこともありました。何故そうなったのかもほとんど思い出せません。

それでも何度も禁酒をし、断酒を決意しては、スリップ(再飲酒)を繰り返していました。ほとんどが半日も続かず、本当に情けない男なのだと諦めながら治療していましたが、自分の脳がお酒に操られていたことには気づけないままでした。

当然のように私のお店は傾き始め、運転資金の名目でさらにお金を借りるようになり、そのうち銀行から借り入れたお金も事業の為か飲酒の為か見分けもつかなくなり、もう管理できませんでした。借金は総額で四五〇〇万円ほどになっていました。

「真面目にバリバリ働いて、酒でストレス解消して何が悪いんだ」

「何故こうなるんだ」

「まったくどいつもこいつも役に立たない」

と、人のせいにするのだけはいつまでも直りませんでした。そう考えている途中もずっとアルコールが入っているのですから、まともな考え方ではないのです。それでも本人だけは大真面目で、

「悪いのはアルコールではなく、あいつらだ」

と思っているのですから本当に怖いと思います。