現在では数多くの英語媒体やツールがあり、また、スマートフォンなどでも聴取しようと思えば生の英語が毎日、毎時間いくらでも聴けるのだが、私が単身赴任した1994年ごろはそうではなかった。

英検1級合格という私の意気込み(息子・娘への自慢)は萎えてしまったのだが、単身赴任になる前年に1次試験には合格していたので、掛川へ行ってからは2次試験のために通信教材のカセットテープを回したのである。

といっても、単身生活のゆえに、というより私の気力不足と努力不足のゆえに、仕事が終わりアパートに帰ったあとは夕食の準備、テレビを見ながらの晩酌と夕食、そしてその後片付けで夜は更け、酔いが回り眠くなり、英語の勉強にはあまり身が入らなかった(だが晩酌は止められなかった)。

1か月に1度は妻が訪ねてきて、1週間ぐらい滞在している間に調理した惣菜を冷凍庫に備蓄してくれたので、毎日は買い物に出る必要がなかった。しかし、妻が来ると土曜、日曜など休日には静岡県内はもちろん、関東からでは容易に行けない愛知県や岐阜県などの歴史ある名所旧跡を訪ねて、日帰りでドライブ旅行に出かけたのである。そこが凡人の凡人たるゆえんで、私は易きに流れ、厳しき道を避ける性癖であった。

赴任した年の夏の終わりのある日曜日だったと思う。妻と一緒に車で浜名湖の(かん)山寺(ざんじ)方面へドライブした。舘山寺が英検1級合格と多分直接関係はないと思うが私には面白い経験だったので、ここで少し触れておきたい。

※本記事は、2022年8月刊行の書籍『カメの歩いた英語道』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。