四ノ二 回復への期待

総合病院の皮膚科と町の漢方薬局の双方での治療が続きました。漢方薬局では何度も抜け毛の状態の検査をしていただき、冷え性の体質も改善していくように指示されました。

学校でも辛いことがあるのではないか、心配はしましたが、幸い仲の良いお友達の理解があり遊んでいたのが救いでした。学校では大丈夫?なんて聞くことはありましたが特に何度も聞くことは、敢えてあまりしませんでした。余計に不安にさせることになるのかもと思ったからです。

子ども同士きょうだいでも、髪の毛について何か口にすることは不思議とありませんでした。

しかし神様はなぜ、小さな子どもをこんな辛い目に遭わすのでしょう、と思ってしまいました。何かで聞いたことがあるのですが、親に心配をかけてこなかった良い子が良い子を演じるのに疲れて気持ちや体が不安定になってしまうのだと。そんな現実もあるのかもしれません。だとしたら全然良い子なんて演じなくてもいいのにとの思いでした。

この病気は、もはや円形ではなくなっている、だけれども悪性の円形脱毛症です。

原因はまだまだ解明されていないことも多く難治性とされています。自分の免疫が間違って毛を異物ととらえ、自分で自分を攻撃している免疫説もあります。よく聞く円形脱毛症は十円ハゲなどともいわれたりするようで、神経やストレスからくるものと一般的には思われているようです。

漢方の先生から見ると由美の印象は、体の線が細くやや虚弱体質で体温も低く、また親へも甘えるなど依存心もまだ強くあるように見えたそうです。そうかなあと思いつつも、先生の指示に従うようにします。

先生には自立心も養いなさいと言われました。なので頭の状態を診てもらったり薬を受け取りに行ったりするのも、敢えて由美一人で行かせることもありました。

家族がこのような病気になり、今まで考えもしなかったことに気づくこともありました。

体の大事な部分を守るために毛があると聞いたことがあります。目を守るために眉毛やまつげがある。そして頭を守るために毛髪がある。だとすれば体の大事な部分を欠いてしまっている由美は障がい者のような扱いにはならないものだろうか。

でも高齢のおじいさんのような場合は、髪がなくても特に不思議ではないと見られてしまうのだからそれと同じで何も助成がなくても当然か。

いや、でも、子どもだという年齢的にみれば元あったものが急になくなっているのは、やはり生活に支障をきたし影響が大きいのではないかと思いました。

もし頭をぶつけることがあれば、防ぐ髪はなく直接、頭皮を傷つけることになります。

暑いときもあったでしょうが、真冬などは、他の人々より寒いのではと思いました。実際、私の母が由美が寒そうに見えるのであったかいものをかぶせてあげて、と言っていたこともありました。由美が子どもの頃には、子ども医療用のカツラの助成、補助金などはありませんでした。

もしかすると、がん患者には、あったのかもしれませんが、由美の場合や私が知る範囲ではありませんでした。

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※本記事は、2022年1月刊行の書籍『模索の扉』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。