7 能力開発の対象は「非認知能力」

ここまで人材育成や能力開発に関する政策や企業、個人の現状を概観してきました。ここからは現状を打開するための現実的な展望を考えていきたいと思います。

前述の調査によると、企業で実施されているOFF―JTは複数回答で上位から、新規採用者対象、中堅対象、マネジメント、ビジネス基礎知識、新規管理職対象となっています。従来通りの階層別研修やビジネススキル習得のための研修が上位を占めているのが現状です。

一方で人材教育を受ける側である労働者の立場から見てみましょう。

文部科学省はこれまでの学習指導要領改訂を行い、2018年度(平成30年度)から新学習指導要領への移行期間が始まり、小学校は2020年度(令和2年度)から、中学校は2021年度(令和3年度)から、高等学校は2022年度(令和4年度)から年次進行で実施されています。つまりこれから職業人となる世代が受ける教育の指針が見直されています。

具体的には、文部科学省初等中等教育局教育課程課が作成した資料20では以下の3つをあげています。

①学びを人生や社会に生かそうとする〈学びに向かう力・人間性等〉の涵養

②生きて働く〈知識・技能〉の習得

③未知の状況にも対応できる〈思考力・判断力・表現力〉等の育成

これらを主体的・対話的で深い学びの視点から学習過程の改善を図ることとしています。つまり従来型の認知能力(学力)からこれまで測定対象としてこなかった非認知能力の習得へとシフトしているのです。

「非認知能力」とは何かについては、文部科学省、厚生労働省、内閣府等の各機関が公表している各提言を集約し、「21世紀型能力」として定義しまとめた一般財団法人日本生涯学習総合研究所の報告書が参考になります。

 
※本記事は、2022年4月刊行の書籍『リーダーのための動機づけ 面接実践編』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。