【前回の記事を読む】きっかけはダメ元?もち麦を「おいしく食べる」画期的な方法!

第3章 ご飯で食べる

小麦の粒食

小麦の炊飯後の柔らかさを数値化するため、物性試験を行いました。炊飯後のもち小麦飯および普通小麦の“飯つぶ”を、一粒ずつ各20回圧縮試験を行いました。

その結果、もち小麦飯(70%歩留り)(歩留り:(とう)(せい)歩留といい、精麦前の麦(玄麦)の重量に対する精麦後の麦の重量比率。数値が小さいほど、より精麦されている)、もち小麦飯(60%歩留り)は、ともに普通小麦に比べて軟らかく、3日後もその軟らかさを保つことがわかりました。

このように精麦後に炊飯したもち小麦飯は、大粒でふっくらと香りも良く、ソフトに炊き上がります。そこで美味しさを評価するため、もち小麦“粒”(70%歩留り、60%歩留りのもち小麦)と普通小麦“粒”(きたかみこむぎ、70%歩留り)を実験試料としまして既製の炊飯器で炊飯したご飯を、52名の健常な成人を対象に食べてもらう食味評価実験(シェッフェの一対比較法)を行いました。

その結果、図表1のように、もち小麦は、香りが良い、ソフトで食べやすい、美味しいとの食味結果を得ました。

[図表1]もち小麦ご飯と普通小麦ご飯との食べくらべ

評価された理由として、もち小麦は老化しにくく軟らかく、またオリゴ糖などの呈味(ていみ)成分がわずかに多いことなどが考えられます。これらの実験、食味調査を行った数年後には、大量生産できるような精麦方法を考案し、文字通り“殻を破ったもち小麦の粒食”が完成しました。

現在、もち小麦の“粒”は、観光農園アグリの里おいらせ(青森県)で、直売およびネット販売しています。

もち小麦ご飯はヘルシー

もち小麦粒の食品成分分析を、日本食品分析センターに依頼しました(図表2)。

[図表2]もち小麦(粒)の食品成分

もち小麦の粒100g中には、食物繊維を約7g含んでいます。日本人の食事摂取基準では、食物繊維の目標量は、成人男性で21g/日以上、成人女性で18g/日以上がのぞましいとしています。白米60gにもち小麦粒90gを加えて炊飯する場合(1合)、お茶碗1杯で3~4gの食物繊維がとれ、もち大麦ご飯もヘルシー志向ですが、もち小麦飯もヘルシー志向のご飯です。

アメリカで出版されたレシピ本では、普通小麦を精麦せずに蒸かしたものをwheat-berry(小麦の実)と称して、サラダのトッピングにする食べ方を紹介しています)。

健康志向が進むアメリカならではの食べ方です。もち小麦粒を同様に使えば、軟らかさの持続するwheat-berryができ、シロップに漬ければソフトなグラッセとして、トッピングやあんこ状にして和洋菓子へも応用できそうです。