こうして、ゴリラとの戦いは幕を閉じました。一ヶ月という短い期間でしたが、とても濃い戦いでした……。

「もうこんなに想ってくれる人は二度と現れないかもしれない」そう思い、彼の気持ちに答えたかったし、できれば彼の希望通り、付き合うという方向に持っていきたかった。でも、どうしても無理でした。

それも当然です。私は彼の「言葉」に心動かされはしたものの、「彼自身」には興味を持てていなかった。実際、「そこまでタイプじゃないけど、悪くはない」程度にしか第一印象でも思っていなかったのですから。

それは時間が経っても変わらなかったのです。それに当時はすぐには気づけませんでした。

一方で彼は、なぜかほとんど話していない私に連絡をしてきた。完全に「軽い女」だと思われていたのでしょう。この頃の私は出会いの場に行きまくったことで男慣れし、そういった印象を持たれることが増えていました。

「ゆっくりで良い」って言った割に返事を急ぎすぎていたし。よっぽど早く彼女がほしかったのでしょう。「そんなすぐに変わらんし」と思いながらも、私は「早く答えを出さなきゃ」と毎日悩んでいました。

そのこともだし、彼の言葉を信じすぎていた。夜景の時点で、「ロクな男じゃない」ということは分かったはずです。でも、それでも好きだと言ってくれた彼を信じてしまった。

「心を入れ替えとく」と言った彼。次のお出かけでボディタッチがなかったので「心を入れ替えてくれたのかな」と安易に信じてしまった。

しかし、私の心がすぐに変わらなかったように、彼の心もすぐに変わるはずがありません。男は、気になる女性には触れたいのです。そんな長期間は我慢できません。ホタルと「付き合っても良いかな」と思ったのは、触られて不快じゃなかった、という点も大きかったです。

しかし、ゴリラの場合は無理でした。

今思えば、彼、「好き」という言葉を使いすぎてはいないでしょうか。「ラブ」より「ライク」の意味に思えてきます。「好き」と言いまくり今までたくさんの女の子をオトしてきたのでしょう。ですが、彼が思うほど私は軽い女ではなかったということです。はい、残念でした(笑)。

でも彼は、「この人と付き合うかも」と初めて本気で思った男性でした。「男性と付き合う」ということについて初めて真剣に考えたし、彼は、とにかく好意をストレートに伝えてくれた。後にも先にも、こんなに「好き」と何度も言ってくれたのは彼だけです。

ロクでもない男だったけど、気前だけは良かった。「女の子にお金は出させない」と、私がお金を払ったのは最初のカラオケのときだけでした(しかも千円で良いと言ってくれた)。

私は好きになれなかったけど、嬉しかった。

ありがとう、ゴリラ。