第3章 情報認知

8 空間のデザイン〈デザイン表現〉

特殊な世界観を構築する

デザイン表現はリアルな現実世界の再現を目的としていないことが多いため、より効果的に伝わる独自空間の創造が求められます。

ロケーション選びや美術、衣装などの空間デザインは世界観とコンセプトの言語化が重要です。目を引くような奇抜な空間が作れても世界観が曖昧であれば、ただカッコいいで終わってしまいます。

既存の世界観に固執しない表現だからこそ、明確なルールを定めて世界観を構築しなければなりません。

光が作り出す空間

ライブ表現では自然なライティングが求められますが、映画やMVなど空間構築が重要な映像作品におけるライティングは空気感とムードの演出が求められます。ただの殺風景な部屋も照明次第で魅力的な部屋に変わります。

また屋外の場合は基本的に自然光頼りになります。天気や季節など人為的にコントロールできない光は、太陽の位置や雲の流れなど、自然のタイミングを見極めることが重要です。

特殊機材を使用した非日常的視点

日常的な空間も特殊機材を使用すれば、普段とは違う非日常的な空間に構築し直すことが可能です。特殊機材は簡単におもしろい世界観が作れるため多用したくなりますが、奇抜さを狙っただけの目的に合わない使用は控えましょう。

ドローン撮影   =空からの視点
スタビライザー撮影=浮遊した視点
シャローフォーカス=幻想的な視点
魚眼レンズ    =歪んだ視点


 

9 画面のデザイン〈デザイン表現〉

画面をデザインするさまざまな加工演出

現代の映像はテロップ、多画面表示、CG合成など、さまざまな加工演出を使用して画面を設計しています。デザイン性の高い編集は情報の理解度を高め、装飾性の高い加工は情動喚起を促します。

[写真1]さまざまな加工技術を使用した例

写実的な「記録色」と、印象的な「記憶色」

目で見た現実に近い色を「記録色」、人が印象として記憶している色を「記憶色」といいます。桜は記憶のなかではピンク色ですが、実際は白っぽい色をしています。ライブ表現では記録色の傾向が強いビデオカメラが多用され、デザイン表現では記憶色の傾向が強いシネマカメラが多用されます。

編集時に色味や質感をコントロールして記憶色を作り出す演色技術をカラーグレーディングといいます。

実写素材を使わずに映像を作るモーショングラフィック

イラストなどのグラフィック要素に動きをつけ動画にしたものの総称がモーショングラフィックです。撮影素材がなくても画像やロゴだけで視覚的インパクトの強い映像が作れるため現代の映像制作では必要不可欠な技術です。

モーショングラフィックなどのCG技術はパソコンスキルが重要と思われがちですが、グラフィックデザインのノウハウとビジュアルセンスが圧倒的に重要です。

どれだけチュートリアルを学習しても、グラフィックデザインの基礎ができていない人にセンスのよいモーショングラフィックを作ることはできません。