Chapter・1 運命の始まりのメロディー

諦めてしばらく目を閉じていると、ようやく目が慣れてきた。そっと目を開けると、目の前には小高い丘。そして、丘の頂上には大木がある。

空を見ると、ところどころピース型に真っ黒な部分がある。こんなに明るいのに、なんでだろうと、あたしは首を捻った。そもそも、コンビニで空を見た時は夜だったのに、なぜこんなに明るいのだろう? この空は、実は天井で、あそこは作成途中とか? でも、わざわざパズルのピースの形に黒いなんておかしい。

あたしは、その不思議な光景に、混乱するばかりだった。よく見ると、丘の麓に木の扉があった。あたしの行先は、あの扉の向こうにあるのだろうか? しかし、その扉まで百メートルはある。

「まだ歩くの……?」

「ほれ。あの扉の中が、ワシの家じゃよ。あと少し、頑張りなされ」

彼はそう言うと、またすたすたと歩いて行く。あたしは、仕方なく彼について行く。疲れてはいるものの、草木の香りが心地いい。風はあるのに、音がない。不思議な場所だ。

「おじいさん、ここはなぜこんなに明るいの?」

「ここは、その時の“空”で変わるのじゃよ」

「空で変わる……? え、意味わかんない」

「ほっほ、お嬢さんも見ればわかるぞ」

よくわからないが、見ればわかると言うなら仕方がない。百メートルくらいだと思った距離は、思った以上に長かった。いくら心地よくても、一向に縮まらない距離と一向に変わらない景色に嫌気が差してきそうだ。ようやくたどり着いた頃には、あたしの足は棒のようになっていた。

「遠い……、遠過ぎる……。おじいさん! こんなに遠いなら最初に言ってよ! 足が棒になっちゃったじゃん!」

「ほっほ。お嬢さん、さては普段あまり歩いておらんな?」

彼は、ニヤリと笑う。こちらは、ぐぅの音も出ない。デスクワークだから仕方ない……と、思いたい。

「ほれ、入りなされ」

そう言って扉を開けると、本とガラスの蓋に覆われたジグソーパズルが目の前に現れた。ジグソーパズルを覗き込むと、一部ピースがない箇所があった。そして絵柄は、外で見たのと全く同じ青空だった。