第一章 トップ会談と候補者擁立

「私は、重複立候補という姑息な選挙制度が大嫌いなのです。小選挙区で相反する主張して選ばれた筈なのに、比例候補としても立候補する事で所属する政党への投票で議員として当選できるなんて、有権者としては全く納得できません。結局一人の候補者に二票投票できるという事で、談合すれば与党と野党の議員が二人とも当選できる、という小選挙区制というよりは、複数を当選させられる中選挙区制に近い選挙制度だと言えます。同じ選挙区で政党が違うことで三名が復活当選できたなら、中選挙区制そのものです。

究極的に一人を選ぶと言っておきながら、与党議員と野党議員が二人とも当選できるなんて姑息極まりない選挙制度に他なりません。有権者としては、断じて許せません! この詐欺みたいな選挙制度を破壊する為に新党を立ち上げたいのです」と武藤が力説すると、

「分かった、私は協力を惜しまないが我々にはもう時間が限られている。失敗は許されないし、もう一度はない。だから戦略戦術を入念に企画立案し、挑むからには目標とする一〇〇議席を何としても奪取して、君の目標である選挙制度改革を成し遂げなければ国民有権者に合わせる顔がなくなるって事だな」と山脇が言った。

「だから先生にも私が立ち上げる新党の理論的支柱として、陰に陽に私を助けて頂きたいのです」と武藤が言うと、

「それは構わんが、新党の名前なんか考えたのかな?」と山脇が振ると、

「私、国家感のない政治家は嫌いなので、頭に日本を持ってきて、民主主義は絶対に譲れない価値観なので、『日本民主保守党』と命名したいな、と思っています」と武藤が言うと、

「日本民主保守党……うーんなかなかいい名前だ、党名はそれでいいんじゃないかな。今日は遅いから後はこの次という事で如何だろう? 私は齢のせいか少し疲れた、帰って体を休ませたいんだが……」と山脇が言い出し、この日のトップ会談は終わる事になった。

こうして国家戦略企画研究所で極秘裏に行われた新党構想のトップ会談がスタートしたのであった。