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「今?特に恋愛する気はないな。恋人を欲しいとも思わないし」

ショウタの顔からは笑顔が消え、なんとなく四人の会話も途絶えてしまい、やらかしたと悟った私はすぐさま話題を変えた。異変に気付いたリサも新たな話に乗ってくれて、何とか場は賑やかさを取り戻した。

兄弟の話になり、朝木さんには妹、ショウタには姉がいることがわかった。女慣れしていることに納得がいく。ただし、この会話も実は地雷であったことに、私は後々気付く。その後はショウタも笑顔を取り戻し、この前の婚活パーティーで話していたメンバーの話などで盛り上がりを見せた。

ショウタは意外と庁内で顔が広いようで、朝木さんの後輩たちや三木とも顔見知りらしい。特に三木は出身が同じとのことで、直属の先輩ではないにしろ何かと面倒を見ているらしい。そうやって、先ほどの張りつめた空気はなかったかのように流れ、にぎやかな食事会はお開きになった。

お店を出てからも何かとはしゃぐ三人とは裏腹に、楽しい雰囲気を乱してしまった後の心配そうな顔でショウタを見つめる朝木さんの横顔と、もやもやとした負の感情が私の心に残った。今のショウタに恋人がいないであろうことはわかったけれど、恋愛に関する拒否反応を隠そうともしなかった。今日聞いた過去の話の他に、あの頑なな態度の原因を作った出来事でもあったのだろうか。

恋人候補にすらなれなかった私は、落ち込んでいる自分に気付いて少し驚いた。ちゃんと話をしたのは今日が初めてなのに、落ち込むほどの感情を持って行かれたことに動揺していた。その反面、深入りしなくてすんだ安堵感にも包まれる。私情を捨てて、公正な目で海上保安部の内情を探らなければならないのだから。考えたくはないが起こりうる最悪の結果が頭をよぎり、慌ててその考えをかき消す。いろいろ考えているうちに朝木さんが近くに来ていたことに気付かず、肩を叩かれてぎくりとする。

「あんまりショウタには深入りしない方がいいよ。傷つくスミレちゃんを見たくないんだ」

私がショウタを気になっていることを、既に朝木さんが汲み取ったのであれば敏すぎるな、とどぎまぎする。朝木さんにとっては厚意でくれた忠告なのだろうが、何の事情も知らない今の私には追い打ちでしかなかった。