また炊飯条件を、精麦小麦(150g)を水洗、水切り後、1.4倍量(210g)の水を加え、30分間室温で放置してから炊飯すると、美味しく食べられることがわかりました。

ただ普通小麦の場合は、同様に精麦して炊飯してみても、温かいうちは食べられますが常温に戻るとすぐにパサパサになります。原因は、普通小麦のデンプンは老化が早いためと考えられ、冷やご飯の状態になります。普通小麦は、もち小麦よりも老化するのが早いようで、デンプンの構造や他成分の影響によるものと考えます。

もち小麦が長時間ソフトに食べることのできるもうひとつの理由は、普通小麦に比べて、グルコースやオリゴ糖など低分子の糖類が、わずかに増えていることです。そのため、もち小麦に羽二重餅の原理がはたらいているのではないかと考えています。

羽二重餅は、お餅に水飴を加えて、水飴がデンプンの隙間に入りこみ、ソフト感を持続させています。デンプンは加熱により糊化し、放冷により老化しますが、例えば、手のひらでグー、パーを繰り返すときをイメージしてみてください。

羽二重餅は、もち米のお餅に水飴(低分子の糖類)を加えるために、糊化したデンプンのすき間に水飴がはいりこみ、パー(糊化状態)からグー(老化状態)への構造変化がしにくく糊化状態が維持されます。羽二重餅で水飴を加えるということは、低分子の水飴が、デンプンが硬くなる(グーをする)のを抑えることです。

※本記事は、2022年7月刊行の書籍『日本で誕生!もち小麦』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。