第3章 ご飯で食べる

小麦の粒食

私たち日本人は、食卓でお米はご飯として、大麦は麦飯として、いわゆる“粒食”生活をしています。小麦はどうかというと、“粉こなもん文化”とか、“メリケン粉”といわれるように、小麦粒を粉に挽いて調理加工しています。

小麦を“粉食”する理由のひとつは、粉にすることにより、小麦特有のグルテン形成たんぱく質の特性を引き出すことができるからです。

[図1]小麦の構造

ドウ(麺帯)を形成すれば、パン、麺類、パスタを作れます。小麦の食文化が、大きく発展したのはグルテン形成たんぱく質にあるといえます。グルテン形成たんぱく質の性質がよくわからなかった時代には、粒のままで、食べていたのでしょうか。そうではありません。

世界の食文化を調べると、トルコなど西アジアでは、小麦を挽き割りにし、スープにして食べていましたが、粒のままというわけではありません。挽き割りや粉食をするのは、小麦は6層の外皮で包まれているため、硬くて粒のままでは食べにくいからと思われます。お米の場合は、外皮が1層で薄いので、玄米ご飯として食べても抵抗がなく、むしろ健康食となるわけです。

硬い外皮につつまれた小麦を“粒”で食べてみようと思ったきっかけは、研究員と“本当に粒で食べられないのか”と雑談していたのがきっかけでした。

ダメ元で、小麦を水に浸漬して外皮を柔らかくし、ひたすら手で揉んで外皮を取り除き、かなり取り除いたところで、市販炊飯器を用いて炊いてみました。するとなんでもやってみるものです。美味しく食べられるではありませんか(図2、3)。

[図2]精麦したもち小麦(左、中央)と普通小麦(右)
[図3]炊飯したもち小麦(中央、右)、普通小麦(左)