【前回の記事を読む】「視力さえ良ければ良い眼」「良く見えるメガネであれば良いメガネ」は間違い...!? 

3 眼を絶えずチェックしましょう

最近、慢性疲労症候群で困っている人がおられるという報道に接することがありました。慢性疲労症候群というのは、便宜的な呼称であって病気でない病気ですから、不定愁訴症候群や自律神経失調症と同類の神経症であろうと考えられます。

したがって、メガネでお力になりたいとの思いはありますが、我々眼鏡店でできることといえば、来店されるお客さまの求めに応じてメガネを作ることくらいです。眼に適合したメガネを正しく使用すれば、眼からの症状は自ずと良くなるものですが、眼鏡店が病症に直接的に立ち入ることは立場上遠慮しなければならないと考えているために、病症との関わりについては『眼にあった正しいメガネをかければ後から副産物として病症の改善効果もついてくる』との立場をとらざるを得ません。

メガネ販売をする眼鏡店の立場からは「眼と神経衰弱」の真の関連を伝えることが難しいので、お客さま自身に内容を吟味していただくのに本書が役に立つことを願っています。

慢性疲労症候群の旧称は神経衰弱であるとWikipediaに記されています。神経衰弱というとノイローゼなどの精神病を思い浮かべますが、この病症名が始まった1880年頃は全身的な神経諸症の総称とされていたようですからWikipediaの注釈は誠に的を射ていると言えると思います。もともと神経衰弱は精神病に特化した病名ではなかったのです。

私の手元には古書店で求めた『眼と神経衰弱』『神経衰弱と眼』『眼性神経衰弱・屈折異常と神経諸症』等の書籍と国立国会図書館に複写をお願いした著書があります。参考資料として用いた本を時系列で掲載しておきます。

ご覧の通り大正から昭和初期の古い本ばかりになってしまいました。意識的に古書店巡りをしたつもりはなかったのですが、「メガネと眼精疲労」についての専門書を探そうとしていましたら、たまたま眼性神経衰弱という呼び方があることを知りました。

そこから神経衰弱が現代における眼精疲労であり、慢性疲労症候群であるということがわかりました。そのことを知るだけでも私にとっては大きな発見でした。ここに挙げた本の著者は一人の耳鼻科のドクター以外は四名の眼科医と、米国オプトメトリストと一人のメガネ店主です。