02 授けられた力

森の中に、いつ、誰が建てたのかわからない、今にも朽ち落ちそうな丸太小屋があった。そこだけ木々が切り開かれ、とても人が住んでいるとは思えない丸太小屋で、しかしきれいに整理された小屋の中で、その女性は生活していた。

女性は赤みがかった髪を三つ編みに結い、足首まである黒いワンピースを着、食事の用意をしていた。そこに、コンコン、とドアがノックされ、気付いた女性はドアに駆け寄る。

「は~い。……いらっしゃい、ジンさん」

女性はノックをした者の正体を確かめもせず、ドアを開けた瞬間に来訪者を「ジンさん」と呼んだ。

「……よう、アン。今日も生きていたか」

そう言った男は、フードを目深にかぶった黒いコート姿だった。

「生きていますよ、もう……。来るたびに言ってますね、ずうっと。それより! 今、食事の準備してたんです。食べてってください」

「アン」と呼ばれた女性はそう言って男の手を取り、すぐそばのテーブルへと案内する。

「食べられんのか?」

「ひっど! 食べられますよ! 私の力、ジンさんが授けてくれたんじゃないですか!?」

「料理の力までは授けていない」

「んっぐ……。その料理の腕も上がっています。確かめてください!」

男はフードを外しもせず、「ふう」と息を吐いて、しぶしぶテーブルに着いた。女性は料理の仕上げをして、できた順に料理をテーブルへと運んでいく。

「どうですか?」

スープを口に入れた男に、女性が味の感想を尋ねる。

「……ん。食べられる」

「なんですか、それ~!?」

そう言って頬を膨らませた女性を見て、男はわずかに口元を緩めた。それを見た女性は「いひひ」と笑い、満面の笑みを浮かべた。