【前回の記事を読む】衝撃!自力で増殖できないウイルスの恐ろしい繁殖方法とは

2 細菌の発見

[質問]「昔は、様々な病気を引き起こす細菌が自然に発生すると信じられていたと聞きますが、細菌はどのようにして発見されたのですか」

(1) 微生物の自然発生説を否定

質問のように、古来、伝染病の病源は、悪行や不潔な生活のなかから自然に発生する悪魔だと信じられてきました。

1748年にイギリスの権威ある司祭で博物学者のニーダムは、スープを密閉した容器に入れて、しばらく放置しておくと腐敗することを示して、微生物は、スープのような有機物の中では自然に発生するという自然発生説を主張しました。これに対して学者たちが反論しましたが、当時の顕微鏡では、微生物の生態まで確認することができず、自然発生説を否定することができませんでした。

1861年にパスツールは、図1のような微生物が入らないようにフラスコの口を細く引き伸ばし鶴の首のように曲げた容器に、煮沸し微生物を除去した肉汁を入れて、しばらく放置しておいても、外から微生物が入り込まなければ腐敗しないことを実験で示して、これまでに言われてきた微生物の自然発生説を否定しました。

写真を拡大 [図1]パスツールの実験(微生物の自然発生説を否定)

さらに、ものが腐敗したり、葡萄が発酵して葡萄酒ができるのは、肉眼では見えない微生物のはたらきであることを証明し、生物には肉眼では確認できない微小な世界があり、多くの微生物がいたるところに無数に存在しているために、これらが食物などに侵入して増殖して腐敗するので、微生物が入り込まないように密閉すれば腐敗を防ぐことができると述べています。

微生物の自然発生説は否定されましたが、ウイルスが発見されて、生物と無生物の狭間にいる超微細なウイルスの起源に様々な推論が出されており、ウイルスの自然発生説まで飛び出しているのです。

細菌は、食肉を腐敗させるように、死細胞でも増殖しますが、ウイルスは生きている細胞以外では増殖できないので、細菌のようにステーキなどを腐敗させることはありません。

ウイルスは、地球上のいたるところにいて、細胞に侵入する前は無生物状態なのですが、一旦細胞内に侵入すると、たちまち生き物のように変身して、侵入した細胞の機能を巧みに利用して活動して増殖し、細胞の命を借りて生命体のように振るまうのです。これが細菌とウイルスの大きな違いです。