【前回の記事を読む】不動産購入資金に1000万円の生前贈与…相続時にどうなる?

遺言があるけど、揉めてしまったケース

登場人物:花子さん一家

花子さんは、一子さんが身の回りの世話をすべてしてくれたことと、一夫さんは実家には帰ってこず、関心がなさそうだったので相続については何も言ってこないだろうと思い、一子さんに全部相続させる旨の公正証書遺言を作成しました。遺言さえ残しておけば、遺産の分け方をめぐって、相続紛争が起こる心配もないと思ったからです。

令和3年1月1日、花子さんが亡くなり、相続が発生しました。

相続財産は、自宅不動産800万円、預貯金400万円でした。一夫さんが、花子さんの相続について尋ねてきたため、遺言書があることを伝えると、一夫さんが、自分にも取り分があるはずだから、それはもらいたいと言ってきました。

果たして、一夫さんにも何等かの取り分があるのでしょうか。また、花子さんの遺言書は無駄となってしまうのでしょうか。

[図表]花子さん一家の相続

実は、被相続人の兄弟姉妹(第3順位)をのぞく、法定相続人には、『遺留分』という、最低限の取り分が認められています。花子さんのケースでは、一夫さんには、『遺留分』が認められているので、遺留分を一子さんに請求できることとなります。

【遺留分とは?】

一定の法定相続人に、被相続人の相続財産の一定の割合の承継を保障する制度になります。そのため、被相続人が遺言書を作成していたとしても、遺留分が認められている法定相続人は、遺留分を請求することができます。

遺留分を主張できる法定相続人(遺留分権利者)

配偶者・第1順位の子ども・第2順位の直系尊属

※第3順位の兄弟姉妹には、遺留分は認められていません!

遺留分の割合

法定相続人遺留分割合

・直系尊属のみ法定相続分×3分の1

・右に掲げる場合以外法定相続分×2分の1

ポイント:遺留分は、遺留分を侵害している人に対し、遺留分を請求することを主張しないと認められません。実務では、内容証明郵便などで請求することがほとんどです。

ポイント:遺留分の請求は、①遺留分権利者が相続の開始および遺留分を侵害する遺贈などがあることを知ったときから1年または②相続開始から10年のいずれか早い方の時期までに行わなければなりません。

ポイント:遺留分は、金銭請求となります(ただし、令和元年7月1日以降に開始した相続に限ります)。