学校でのこと。朝一番の真理の教室で、担任の練田(れんだ)先生が、

「はい、では、持ち物検査しますから、持ってきた物、机の上に出して」と言った。

すると、真理の同級生、(あさ)()(あき)()が、真理の物を見て、

「それ、うちのママが大事にしてたハンカチじゃない? この間、うちに遊びに来た時にうちから持っていったんじゃないの」と騒ぎ出した。

真理は、「これは私のママのなの。うちから持ってきました」と言ったのだが、練田先生は、真理のハンカチを見て、

「獅子谷さん、そのハンカチ、コシダ・ジュンのじゃない。そんな高級な物どうしたの。麻尾さんは麻尾さんのママのだって言ってるけど、どうなの。ちょっと待ってね。獅子谷さん、ちょっと、職員室に来て」

職員室で、練田先生が、真理に言う。

「獅子谷さん。お母さんのだということは分かったけど、それはおうちの方はご存じなの。ちゃんと了解をもらって、持ってきたの。麻尾さんの家から、持ってきたんじゃないでしょうね」

「ちゃんと、母がそこから持っていきなさいって言うから、母のタンスの引き出しを開けて、そこから持ってきたんです」

「そこって、大事な物が入ってたりするところなの」

「いえ、母の衣類が入ってる普通のタンスの引き出しですけど」

「普通のタンスの引き出しに、そんな高級な物が入っているのかしら」

「そうですけど」と一生懸命説明するのだが、なかなか信用してもらえない。

結局、そのハンカチは、練田先生の預かりとなり、裕美がまた呼び出されることとなる。