二月二十七日

今朝別れた、なつかしい母上様

この大切なお手紙と私とを乘せて、赤い馬橇(そり)は雪の石狩原野を走りつづけました。

夕日が、その最后の輝きで、雪原をバラ色に染め上げた時、地平線にポツッと〟何か〝が、現われ、だんだんに近づいて、小さな橋になりました。質素な橋は、どこもすっかり白樺の枝や幹で作られていて左右の手摺の枝はPAX・DOMINEと文字のかたちに組まれています。それは、お母さん「主の平安」と云う意味なのです。これが、マリア院の入口でした。