富豪たちの政治資金で動くアメリカ

アメリカでは、基本的にどの政党も資本主義系であり、富裕層・大企業の意向に従う政治をしている。

富豪が金庫番を務めていたので、巨大資金を使い勝利したオバマ元大統領は民意を尊重し国民皆保険を実施しようとしたけれど、直ぐに廃案同然にさせられてしまった。

増田悦佐著『日本と世界を直撃するマネー大動乱』(マガジンハウス、2012)には、「大企業と金融機関にしてみれば連邦議会や大統領選でさえ自分たちの強欲をかなえるため、しっかりと巨額資金で縛りをかけ手足のごとく動かし」「歴代の(米)大統領は富裕層の税金を上げると富裕層から献金が入り、増税案は見送られる」と記されている。

彼によると、常に米大統領選を混乱させる原因の一つは「富豪たちが潤す政治資金」で候補者を後押しするのは無制限に献金を集め特定の政党や候補者を支援する特別政治活動委員会(スーパーPAC)であり、富豪らの巨額献金の受け皿であるとも指摘されているという。

そして、2016年11月に行われた米大統領選で、クリントン氏の行かなかった貧困層の多い地方を訪れたおかげで勝利したとも言われるトランプ氏が2017年1月に就任すると、オバマ大統領の推進した医療保険制度に猛反対したトム・プライス氏を厚生長官に、財務長官には金融大手ゴールドマン・サックスの元幹部であったスティーブン・ムニューシン氏を、国家経済会議委員長にはゴールドマン・サックス社長を、国務長官に石油大手のエクソンモービル会長ティラーソン氏、そして商務長官には著名な投資家ウィルバー・ロス氏を指名。

加えて、海兵隊退役大将ジョン・ケリーは国土安全保障長官に、元中東軍司令官のジェームズ・マティスを国防長官として、元陸軍退役中将マイケル・フリンを大統領補佐官にと起用したが、2月にはフリンの代わりに元陸軍中将キース・ケロッグを大統領補佐官代行に充てている。

これらは富裕層にとって有利であるうえに、軍国主義的な国家にしようとしているようにも思われる。

そのアメリカでは、2001年9月11日の同時多発テロから起こったイラクとアフガニスタンの戦争で、18年後には米軍戦死者の累計が約6700名となった。しかし、帰還した元兵士たちの中には、最近1年間だけで7000名以上もの自殺者が出ているといわれ、平均すると今でも毎日20名の命が失われている計算になるのである。

このことは、北海道新聞に「戦場では、目の前で仲間が血を噴き爆弾で手足を吹き飛ばされ死んでいったし、イラク人の子供の遺体がいくつも転がっていた。今迄ともに戦った者の肉片や血のついた車両を洗わねばならぬ戦場での体験と極度の緊張感、そして悔恨(中略)心身の「異変」が日を追うごとに表面化していき突然錯乱し大声を上げるようになる(中略)そのような元兵士たちが自殺を図っているのであるが、米政府の自殺対策などでは効果が上がらないようである」と報道されている。

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