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真一の葬儀は翌日の午後から団地の集会所で行われた。左沢のクラスは全員が参列することになり、授業は午前だけで終わり、慌ただしく給食を済ませてから式場に急いだ。リーゼントのふたりは朝から学校に顔を見せなかった。クラスのみんなが予想したことだ。

焼香の列に並んでいるとき、左沢は列の後方に佑太がいることに気がついた。クラスが別の佑太は、特別に許可をもらって参列したようだ。

左沢は、集会所の玄関に(しつら)えられた焼香台で焼香したあと、前の広場の片隅で佑太を待った。そこは小学生の頃三人でサッカーボールを蹴って遊んだところだ。

「真一はなんで自殺したんだ。原因は何だ」

佑太は左沢の横に立つとすぐに訊いてきた。左沢はただ首を横に振ることしかできなかった。中学生になり、三人が顔を合わせることは少なくなったが、月に何度かは会っていた。しかし、二年生になって佑太がサッカーチームのレギュラーになってからは、話すことはもちろん、遠くから目線を交わすことすら途絶えていた。

真一とも似たり寄ったりだった。左沢たちの中学校は隣り合うふたつの小学校がひとつにまとめられ通う学校だ。だからクラスの構成もふたつの小学校の卒業生の混成になる。

中学生ぐらいの年齢になると、自我の目覚めとともに新しい世界を求めるようで、別の小学校の卒業生に感じる微々たる雰囲気の違いも、この年頃の子どもたちには刺激的なものに感じられ、新しい交友関係が広がる。左沢にも真一にも、それぞれの新しい友人ができた。昼休みや授業の合間の休み時間はその友人たちと過ごし、それは放課後にまで及んでいった。

とはいえ、真一との仲が(こわ)れたわけでも疎遠になったわけでもない。真一との仲は心のずっと奥でつながっていた。それはのちの友人に感じるものとは異質のもので、兄弟に感じるものに近かった。このことは佑太についても言えることだ。

「おまえ、本当に何も知らないのか」

佑太は詰め寄るようにさらに訊いてきた。左沢は、一瞬、リーゼントのふたりのことを話そうとしたが思いとどまり、ただ垣根の夾竹桃の花を凝視し続けた。左沢の思いつめた様子に、佑太はそれ以上言葉を重ねることはなかった。が、ときおり責めるような目線を向けてきた。ふたりの重たい沈黙は真一を乗せた霊柩車が視界から消えるまで続いた。