交換条件によるしつけ

お互いの要求が満たされるならばこれほどうまくいくしつけはないでしょう。いくつになってもほしい物、手に入れたいことは尽きません。

小さい頃は「病院に行ったら、帰りに本を買ってあげるから行こうね」とか、「成績が上がったらゲーム機を買ってあげよう」とか、親の子どもにこうしてほしいという思いと、子どものほしい物のバランスが合えば交換条件は成立します。

そのほしい物を目指して一生懸命努力をすることも難しくないでしょう。しかし、最初は100円くらいのお菓子で交換条件が成立したとしても、次第に交換条件がエスカレートし、数千円のゲームソフトや数万円のゲーム機などを条件に出さないと成立しなくなるばかりか、逆転して「バイクを買ってくれたら学校に行ってやってもいい」というふうに、子どものほうからほしい物を手に入れるための交換条件を提示することになりかねません。

お互いの利益のために交換条件を用いるやり方は、win-win(ウィン・ウィン)の関係(両者が利益を得る関係)として仕事上の交渉では珍しいことではありませんが、親から学んだその手法を活用することによって贈収賄事件につながる可能性も秘めているわけです。

交換条件ではなく、努力したことに対して言葉や態度でのごほうびや、思いがけないプレゼント(品物、食事、旅行など)はあってよいかもしれません。よく、「自分へのごほうび」という言葉がありますが、やがて自己完結できるようなごほうびが使えるようになることも必要かと思います。

【前回の記事を読む】「怒るしつけ」と「叱るしつけ」の決定的な差とは?

※本記事は、2022年3月刊行の書籍『「心の育ち」と「自分らしさ」-子育てと自戒-』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。