脅すしつけ

親は子どもをしつけるときには、脅すしつけを用いることが多いように思われます。

おとぎ話の読み聞かせも、じつは「いいつけを守らない子にはこんな恐ろしいことが待っているよ」という内容を含んでいるものが多く見られます。たとえば、「嘘をついたら閻魔(えんま)様に舌を引き抜かれるよ」とか……ちょっと古いですか。

世の中に子どもへの脅しは溢れているといっても過言ではありません。しかし、脅しはどこまでいっても単なる脅しにすぎません。「そんなに困らせるなら、母さん出ていくからね!」と言ってみても、子どもは母親が3時間以内には戻ってくることを知ってしまうでしょうし、「言うことを聞かない子は病院で注射をしてもらうからね!」と脅すと、病院はお仕置きの場として認知されるかもしれません。神様を信じる子どもに対して、最も強い脅しは「神様の(ばち)が当たる」ということかもしれません。

子どもによって怖いと思うことはそれぞれ異なります。天文学が好きな子どもに対して「そんなことしたらブラックホールに吸い込まれるぞ」と脅したら、子どもが(おび)えて大変な事態になったという相談もありました。

一方、脅しによるしつけは怖くなくなったらおしまいです。しかも、しつけとは人をコントロールする手段の一つですから、脅すしつけを受けて育った子どもは、その手法を真似て人を脅して思いどおりにさせようということにもつながる要素があります。

たとえば恐喝です。脅して思いどおりにしようとしたり、脅してほしい物を手に入れようとしたりするような人にしないためにも多用すべきではありません。

しかし、本人が予測できないような大変な事態になることがわかっている場合には、脅すのではなく、なぜそのようなことをしてはいけないのか、どのような危険性が潜んでいるのかといった説明を丁寧にすることは必要です。

たとえば、火遊びをしている子どもに対して、「危ないからやめなさい!」と単に制止するのではなく、「ライターの火をつけて遊んでいると、気をつけていれば大丈夫だと思っていても、一瞬で燃えやすい物に火が移って火事になる危険があるからやめようね」という説明です。

脅すことと何が危険なのかを想像する力を養うことは、危険性を伝えることは同じであっても似て非なるものではないでしょうか。