この才気、伊達ではない

「そういえば自己紹介もまだだったわね。私の名前はリリア・アージュ。マギの技術者、マギクラフトよ。それとこの街にあるマギの工房、白金の工房長をしているわ」

胸に手を当て、自己紹介する。その際ジンの眉がピクリと動いたが、ほんの一瞬の動きであったためリリアは気付かなかった。

「国の方からも色々な計画を引き受けてたり、新しいマギの製造も請け負ったりもしてるんだけど、それらとは別に私の方で進めてる計画があってね? それに貴方に参加して欲しくて、声をかけたってわけ」

「……だがマギクラフトである君が、傭兵の俺をどうして欲しがるんだ? マギと戦士とでは、なんの関係もないんじゃないのか?」

「これだからシロートは」

呆れたようにやれやれと手を振るリリア。

「確かにマギクラフトと戦士とじゃ余り関係はないかもしれないわ。でもマギとその操手とじゃ関係大有りよ。貴方は、優れた戦士。身のこなしや体術、どれもこれも素晴らしいと感じたわ」

だからこそと続け、リリアは身を乗り出して訴える。

「その優れた技量を、マギの操手として活かして欲しいの。マギと操手の二つを繋ぎ、より最適化した動きを実現させて、マギを一段上のステージへ押し上げるためにもね」

そう言い置き、リリアはまず、マギの操縦についての説明を始めた。

マギの操手は操手座に満たされている液体、結合血晶(ユナイトジェル)を通し、視界や肉体の感覚をマギと共有して動かしている。そのためマギの操手は、自分の肉体がマギのそれと置き換わったように感じると言われている。……だが、

「元の体の感覚で動いてるせいか、まだまだ動きが大雑把なのが多くてね。それを矯正するための訓練も積ませてるんだけど、イマイチ効果が出てなくて……」

微妙な顔になり、リリアがいう。

勿論マギ自体を操手の動きに合わせるという考えもある。そのための調整は随時行ってはいるが、しかし動かすのは結局のところ人間であり、操手の方をどうにかしなければ根本的な問題の解決には至らない――そう、リリアは考えていた。

そこでより本格的な動作の矯正と精度の向上を目的とした訓練計画と、動作のサンプルの抽出をエムスエラの錬金術本部及び王軍へ提案。これまでの功績を鑑みられたリリアは、一応の許可を得た。

それに喜んだ彼女は勢い込んで各所へ連絡し、動作サンプル抽出のため、優れた戦士を一人か二人回して欲しいと頼み込んだのだ。しかし、である。

「結果は散々だったわ。でもこのご時世だし、マギ以外にも優れた戦士の活躍の場は幾らでもある。予想できたこと、だったけど――」

リリアはそこで言葉を切り、ムスッとした顔になる。計画が上手く進められず、悔しかったのだろう。