明治時代に岡倉由三郎が提唱した「8つの原則」

英語教育改革への取り組みは戦後が初めてではなく、明治の頃、低学年への英語教育に警鐘を鳴らした岡倉由三郎は、4年間の海外留学を終えて帰国した後、1909(明治42)年に「8つの原則」を基本とする新教授法を文部省の報告書に著しました。フリーズの「オーラル・アプローチ」と比べてみても遜色のないものです。

内容は、

1.最初の間は、耳によってのみ訓練すること。

2.全課程を通じて、出来る限り外国語を用いること。

3.自国語を外国語に翻訳すること[つまり和文英訳]は、上級の外は、全く除くか、または幾分か除くべきこと。

4.外国語を自国語に翻訳することは、なるべく減縮すること。

5.授業の初期には、広く絵画を用い、具体的に示すべきこと。

6.Realien[風物教授]、即ち外国の生活・風俗・制度・地理・歴史・文学などを広く教うべきこと。

7.読本[リーダー]を基礎として、たえず会話を行うべきこと。

8.文法は読本から帰納的に教うべきこと。(『中等教育教授法・上』第3章、1910年)(『日本の英語教育200年』伊村元道著/大修館書店2003年刊/71頁より)

岡倉由三郎は、以上の新教授法を提唱しただけでなく、1911(明治44)年に博文館から出版した『英語教育』の「教育教授の要旨」で目的論を語り、既に世間から「英語教育は効果が上がらない」と非難を受け、英語の学習意欲を失っていた学生を鼓舞するなど、英語教育の普及に貢献したことで知られています。

※本記事は、2022年2月刊行の書籍『話せる英語教育その方法 あなたは子や孫にどんな教育を望みますか』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。