妖魔狩り

シュラとゲンはある街へ来ていた。街は、ユラの村から街道を西へ三日ほど行ったところにあり、様々な階級の武人や狩人たちが集まる場所だ。目的は妖魔狩り。

ここは、近隣の村々や街などに妖魔が出現すると、その妖魔狩りを一手に引き受ける街の一つで、このような街は世界各地にあり、旅をする武人や狩人はここで金稼ぎをすることが多い。街はいくつも連なる街道から北へ行った高原にこびりつくように建ち並ぶ建物群から成っている。高原の頂上付近には他の建物より一際大きな建物が建ち並んでいる。

街は、それらの建物が扇状に広がっていき、その傾斜にそって次第に小さな建物が多く建ち並んでいく。街の北側は高く聳える山脈が立ち並び、南は豊かな土地が広がる村々が多く点在する。西に少し行けば砂漠地帯が広がり、東に行けば深い森が広がっている。

そんな風景を望むことのできる高原の頂にある街は、四方を大きな外壁で囲まれている。城壁のように高く聳える外壁の高さは、さながら要塞を思わせる。壁の高さは、四階建ての建物よりも高く、壁の表面は漆喰で塗り固められている。昔は純白の色を誇っていたのだろうが、今ではその外壁も長年のときとともに蓄積していく汚れでくすんだ色をしている。

そして、外壁の上と入り口ではこの街を守る衛兵たちが何人も立っており、街門では街を出入りする人々の検分を行う役人や警軍の姿も認められる。街へは東、西、南の三方から入街することができ、シュラとゲンは東の門から街へ入る。

門を潜ると、はじめに目にするのは商業市場だ。そこには数々の露店が建ち並んでいる。露店はまるで蛇が通る道が如く連なり、まるで規則性が無い。そのため、奥へ進めば進むほど自分の位置がわからなくなる。露店のあちこちからは、商人たちの張り上げた声が聞こえてくる。

それはどれも、何かが安値で買えるというものだった。そして、それを求めるように人々が店の前へと集まっては散っていく。ここは妖魔狩りを生業としている者たちが多く集まる街が故なのか、露店に並ぶ品はどれも妖魔に関係するものばかりだ。

店に並ぶ品は、どれも対妖魔用の武器や狩ってきた妖魔の何かを用いた品や道具ばかり。妖魔の骨や角、皮などで作られた工芸品や装飾品が売られていることもしばしばだ。

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※本記事は、2021年12月刊行の書籍『享楽の知謀者『見聞之録』 流浪の旅人』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。