「Hi everyone! もう打ち解けた? Great!」

緩く後ろで束ねた髪を揺らして生徒会室に飛び込んできたのは、顧問のリカちゃんだ。山本(やまもと)里香(りか)先生。英語をやっているとこうなるのか分からないけれど、とにかく元気。二十五歳よりずっと若く見え、先生っていうより近所のお姉さん、という感じ。だからついついリカ先生ではなく、リカちゃん。陰でしか呼ばないけれど。

リカちゃんは、俺に向かってぱちんとウインクを飛ばす。

「前期から引き継ぐ活動の話は、もう済んだ?」

これからしようと思ってたの!

俺は生徒会の四つの基本活動、『行事の統括』『専門委員会の活性化』『ボランティア』『広報活動』について話を始めた。それと生徒会というのは、道枝中生全員を指すけれど、俺は生徒会役員を生徒会と呼ぶことがあるし、そう思っている生徒も大勢いる。なんてことも、すべて引継ぎに書いてある。わざわざ説明しなおす必要なんかないはずだ、省略しようかな、と思っていたのだが。

土居が遠慮なく、俺の説明を遮る。

「広報『道枝日和』? そんなんあったっけ?」

「専門委員会って、学級委員とか生活委員とかのことですか?」

岩崎が、リカちゃんにそっと声をかける。

越智は椅子の下で足をぶらぶらさせながら、「ボランティアって生徒会のお仕事だったんだねー」と俺の顔を見た。

こいつら引継ぎ読んできていないのか? いやそもそも、生徒会の活動は逐一(ちくいち)報告や案内をしているのだから、役員に立候補したなら知っていて当然だろう。

どこまでふざけたやつらなんだ。生徒会役員なんか、名乗るんじゃねぇ!

【前回の記事を読む】「今日から俺が、正式に生徒会長だ」…何も変わらず教室の隅にいた

※本記事は、2021年11月刊行の書籍『松岡葵の生徒会日記』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。