結果は神のみぞ知る

和枝の体調が安定しているため、二クール目の三回目の投薬は初めて外来で行われた。和枝によると、薬液は大さじ一杯プラスαの量。

これを四十分ほどかけて点滴でじっくり投与していくのだそうだ。

「薬の値段はね、保険適用で三~四万円だって。この一回で」

十一月二十一日の朝、ついに山が動き始めた。電話が鳴り、廉が取ると高井先生で、急いでいるようだった。

「ご本人はいらっしゃいますか」

すぐ和枝に代わったが、「ありがとうございます」とか「え~! 入院長くなるんですか」とか、状況の見えない会話が続くので、廉は通話が終わるのをじりじり待った。

話はこうだった。

「この前、私が受けたCT検査ね、あれで肺気胸が見つかったんだって。でもね、放射線科の先生と画像を確認したら、新しい薬での抗がん剤治療のお蔭か病巣が少しだけ小さくなっているらしいの。なので、劇的とまでは言えないにしても一定の効果があったと判断していいそうよ」

抗がん剤の効果が認められたのはこれが初めてで、喜ぶべき話ではある。ただ、高井先生も気にしている肺気胸のことはやっぱり気掛かりで、手放しには喜べなかった。

和枝も「これこそ一喜一憂ね」と苦笑した。

三クール目を迎えた入院三日目の夜、和枝は、ふらりと病室に現れた高井先生をつかまえて「肺がんステージⅣの見通し」について質問攻めにした。

「結果は神のみぞ知る」

「一年無事に終えたら、また次の一年と続いていく治療生活」

先生はそう繰り返すしかなく、その答えからは重い現実しか返ってこなかった。この病気に関しては「薬の効果があった」イコール「治療を終える」ということにはならない。