少し前に通知オフ設定したラインを開くと母からのメッセージがある。

「里奈は元気にしてますか? お母さんはおばあちゃんのお世話が大変です。また入院してしまいました。これからお母さんはおばあちゃんのお見舞いに行ってきます」

数年前から祖母の様子がおかしかった。車を運転すると、手が上がらないと行ってギアを持ち上げるのが容易でなくなったという。

速度も二十キロで走るようになり、動きが鈍く、力が入らなくなった祖母を母が病院に連れて行くと「パーキンソン病」だと診断を受けた。

薬を使って身体を動かすことができるようになると、働き者の祖母は掃除や料理、庭の草取りをしてせっせと働いた。

母と祖父は「働きすぎないで、ゆっくりして」と止めるが「自分はまだ動ける。誰の手も借りない」と言って聞く耳を持たない。

気持ちと裏腹に、祖母はダイニングと廊下を繋ぐ引き戸の溝で躓いてしまった。すぐに母が病院へ連れて行くと祖母の足は骨折していた。

その度に入院をするのだが、入院を四回ほど繰り返した時にはレビー小体型認知症も発症してしまう。

本格的に母の祖母への介護が始まった。レビー小体型認知症になると幻視がある。

祖母は「子どもがいるから夕飯を分けてやりなさい」と母に言っては「そんな子いない」と答えると怒った。

祖母が家事をするのを無理にでもやめさせて、家事全般ができない祖父に代わって仕事で忙しい母が食事の用意をした。毎日では母の体力が持たないので週二でヘルパーさんを雇う。

それでも仕事が終わって帰宅すると祖父母の家に向かい夕飯を共にし、食器の片付け、寝床に入る前の準備を手伝ってから自分の家に戻る。そこまでで二十二時になる。やっと自分の時間が持てても眠気と疲労で何もする気が起きないでいた。

祖母が動き回って怪我を増やし病院へ連れて行く、という繰り返しの日々に心休まる時間はなかった。

そのうえ残業があると祖父母は決まって「遊んで帰ってきている」と嫌味を言う。それを母から聞かされると私まで憂鬱になった。

【前回の記事を読む】職場で「脳死してんの?」と女性に言われた男が体調不良で早退

※本記事は、2021年10月刊行の書籍『拝啓、母さん父さん』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。