第三話 熱い石ころ

仮免許の「法令」の試験の結果は明夫が九十点、常雄が八十点、同期に入った二人の高校生が八十五点と九十五点だった。

「チェ、やっぱりおれが一番悪いのか」

二人の高校生は笑った。

「受かればいいんだ。肝心なのは技能試験の方だよ」

技能試験となると、話は逆になる。明夫は自信がなかったので、前の日に一時間、当日の午前中に一時間、補習の練習をしておいた。

規定の料金さえ出せば、補習の練習ができるのである。試験は午後である。食堂で食事をし控室に戻る途中で常雄に出会った。

「コース発表されたか」

控室に入ると、黒板に今日の検定コースがチョークで描いてあった。

「平気、平気。難しくない。受かったら帰りにパチンコでもやっていこう」

受験者は約三十人で三台の検定車で仮免許の技能試験を行なう。まず教師に連れられて試験のコースを一巡した。

実際に歩いてみると、コースが憶えられないとぼやいている老人でも何とかなる。

「胸がどきどきする。お前はどうだ。手を当ててみろよ」

さっきまで自信のあった常雄が、まるで小心な中学生のようになってしまった。常雄の順番はすぐ来た。

明夫は控室の窓にもたれて眺めていた。常雄の乗った車はスムーズに動き出した。

この間、常雄が話題にした神野という若い女が明夫の近くにいた。案外、小柄な女だがプロポーションはよい。常雄がセクシーだというだけあって、男を惹きつけるところがある。

運転のとき敷くのだろう、座布団のようなものを抱えている。

「二人とも学生さんでしょう」

彼女から話し掛けてきた。

「彼は今、家で商売している」

「そう、わたしはどっかの学生さんだと思ったわ」

「自信、ある?」

「どうかしら。わたしもう二度も滑ったのよ」

常雄の車は何のとどこおりもなく順調に走っている。もっとも遠くから見れば運転者が背中に汗を流していようと、エンジンを少しばかりふかせすぎていようと分からない。