余談だが、島居夫妻の話の中に、記憶に残る興味深いことがあった。NHKの人気朝ドラ「マッサン」というのが二〇一四年にあった。竹鶴政孝氏とスコットランド人の妻リタが、苦労の末に北海道で「ニッカウヰスキー」を起こしたストーリーのドラマ化であったが、なんと山路一族の人で竹原の「竹鶴酒蔵」に婿入りした人物がいたというのである。

ドラマの中でもマッサンの父親は入り婿であったから、その立場に収まっているはずの人物ということになる。残念ながら離縁となって戻ってきたとのことであった。もし、うまく収まっていたらきっと「マッサン」の成功ストーリーはなかったかもしれないし、あるいは違ったストーリーになっていたかもしれない。

島居家は尾道で由緒ある豪商の家柄である。千光寺の近くに湊のやど「島居邸洋館」というホテルがある。島居氏所有の大きな邸宅を改装しホテルにしたそうだが、その改装を担ったのが、宜嗣さんが関係する「ディスカバーリンクせとうち」という会社であった。

ホテルは、観光地尾道のセールスポイントのひとつになっており、尾道の町おこしに貢献して注目されている。ちなみに後日分かったのだが、ディスカバーリンクせとうちの創業者は出原昌直さんと言う方で元伊藤忠商事の社員だった人物である。繊維部門に在職中、現伊藤忠商事会長の岡藤氏と共に活躍したらしい。ある時、岡藤会長とお会いした際に話題となったことがあった。

※本記事は、2021年10月刊行の書籍『一族の背負った運命【文庫改訂版】』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。