緩和ケアを味方につける

よく患者さんからこんな質問を受けます。

「抗がん剤治療を勧められているのですが、断ったらもう治療してもらえないのでしょうか?」

答えはYesであり、Noでもあります。乳腺外来や消化器外科といった通常の診療科では、3大療法を中心としたがんの治療を行っています。ですから抗がん剤の副作用が怖くて治療を受けたくない、セルフケアのみでがんを克服したいなど、3大療法を希望しない場合、通常の診療科で治療を続けることはできません。なぜなら、医師の立場としては、必要な患者さんに必要な治療を施さないことは倫理的に許されないからです。

また、患者さんが治療の継続を希望しても、薬剤耐性ができて、いくつもの抗がん剤の種類を変えて治療を続けた結果、いよいよ使える抗がん剤がなくなった場合、医師から「残念ですが、これ以上打つ手はありません」と最後通告を言い渡されることもあります。

いずれの場合も、患者さんとしては医者に見放されたと思い、「もうこの病院では診てもらえない。これからどうすればいいのか」と途方に暮れてしまいます。

しかし、決してこのような「がん難民」になってはいけません。たとえ3大療法を受けなくても、治療を続けることは可能です。もし医者に見放されたら、それは逆に大きなチャンスだと考えてみてはいかがでしょうか。3大療法という“ノルマ”から解放されて、自然治癒力を高めてがんの根本的な原因を改善するための治療やセルフケアに臨むことができるのですから。

そこで利用したいのが「緩和ケア」です。大きな病院には「緩和ケア科」があります。緩和ケア科の目的は、病気の進行や治療に伴うさまざまな症状を緩和して、生活の質(QOL)を保つことです。

「がん緩和ケア科」には「緩和外来」と「緩和病棟」があります。いずれも、3大療法をしていなくても、がんに伴う症状の緩和やメンタルケアを行ってくれます。緩和ケアと聞くと、いわゆる終末期の医療(最近はエンド・オブ・ライフケアと言います)を思い浮かべるかもしれません。

しかし、それは自然治癒力を認めていない病院側の見方にすぎません。近年は緩和ケアの考え方は変わってきており、がんが進行していない段階からでも、苦痛になる症状を和らげるために緩和ケアを受けることが普通になってきています。たとえ余命宣告を受けたとしても、自然治癒力を最大限に活かす治療やセルフケアに取り組もうと思えば、サバイバルのための医療という前向きなイメージで緩和ケアを利用することができるはずです。

あなたが3大療法を選ばず、セルフケアだけでがんを克服しようと決心したら、今通っている診療科の先生にその旨を話して、緩和ケア科に紹介状を書いてもらうようにしてください。

※本記事は、2022年3月刊行の書籍『がんとの共存を可能にする3つの治癒力強化法』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。