彼女が手持ちの薬を飲んで昏倒したことを思い出した。誰も自分のことなんかかまってくれない、いやかまうどころか関心すら寄せてくれない、そういう気がしたとき、あまりにつらくて衝動的になってしまったのだ。しかし今回彼女はそういうことをしていない。そこに私は希望を持つことにした。

「あっという間でした。あんなに楽しくて幸せだと思っていた時間が、急にどうしていいかわからない、不安でいっぱいの時間に変わってしまったんです」

そこで彼女は口を閉じ、私の方を向いた。だがその視線は、再び私を通り越して、ずっと遠くに向けられているような気がした。私は言葉もなく彼女を見返していたが、ようやく口を開いた。

〈あなたは大学では頑張っていい成績を残し、バイト先で店長や同僚とうまくやった経験があり、就職活動でも採用されるかどうかわからない状況で一生懸命やれていました。今回は何がうまくなかったのでしょう〉

2.自信のなさがどんどん自分を追い詰めていく

彼女はつと視線をそらして考えているようだったが、すぐに、わたしはいけない子なんです、とつぶやいた。

「周りの人に優しくされたりほめられたりすると、嬉しくて仕方がありませんでした。周囲は新入社員だからと気遣って親切にしてくれていただけなのに、わたしはそれがわたしへの評価だと思い込んでしまったんです。それまでは、最初は必ず厳しくされるものだと思っていましたし、厳しくても耐える自信はありました。でも、優しくされて……舞い上がっていたんですね……わたし……」

「いつまでも甘やかされるはずはないのに、皆さんの口調が普通になってきて、いろいろ注意されたり指摘されるようになると、やはり自分はダメだったか、何とか取り戻して最初の頃のようにほめられなきゃと、焦りながら仕事をして、何か言われると、ああやっぱりと。どんどん落ち込むんです。悪循環です。ほめられても耳に入らず、何気ない一言は自分への批判にしか聞こえない。うまく言えませんが、そんな状態です」