核兵器の国際的な管理体制を提唱したフランクレポート

ルーズベルトの死によって、今度はトルーマン大統領を目指して、再び科学者たちの原爆投下阻止の動きがありました。

一九四五年六月一一日には、シカゴ大学のジェイムス・フランクが、マンハッタン計画の一端を担ったシカゴ大学の冶金研究所のグレン・シーボーグ、レオ・シラードなど七人の科学者と連名で以下のような報告書「フランクレポート」を大統領諮問委員会である暫定委員会に提出しました。

「核爆弾は、この国が独占権を持つ『秘密兵器』としては、おそらく数年以上にわたっては存在できないであろう。その構造の基礎となる科学的事実は他国の科学者にもよく知られている。核爆発物の有効な国際管理制度が確立しなければ、つまり、事前に国際管理制度を作っておかなければ、我々が核兵器を持っていることが世界に知られるや否や、核軍拡競争が確実に起こるだろう。

他の諸国は一〇年以内に核兵器を所有するであろうし、一トンよりも軽いその兵器の一つひとつが五平方マイル以上の市街地を破壊できるであろう。そのような軍拡競争がもたらすであろう戦争においては、人口と工業が比較的少数の大都市圏に集中している合衆国は、それらが広範に分布している国(つまり、ソ連)に比べて不利であろう。

ソ連に原爆の情報を与えず、国際管理にも加えずに原爆を実戦使用するなら、ソ連はそれを脅しとみなし、国際管理だけではなくあらゆる交渉において(かたく)なな態度を取ってくるだろう。だから戦後の平和のためにも日本に使用してはならない。

それに、原爆を実戦使用してしまったあとで原爆の開発を制限しようとしても説得力がなく、どの国も従わないことになる。我々は、このような理由から、早期に無警告で日本に対して核爆弾を使用することは勧められないと考える。

もしアメリカ合衆国がこの無差別破壊の手段を人類に対して最初に使用するならば、合衆国は世界中で大衆の支持を犠牲にし、軍拡競争を加速させ、このような兵器を将来においてコントロールするための国際的合意に到達する可能性を傷つけるであろう。

したがって、一方的に秘密裡に実験するとか日本に使用するのではなく、それに代わって、砂漠か無人島でその威力を各国にデモンストレーションすることにより戦争終結の目的が果たせる。まず、核兵器の国際的な管理体制を作り上げることが肝要である」という報告書をまとめました。

この報告は、陸軍長官のスティムソンが設置した原爆使用について大統領が諮問する専門委員会の科学顧問会に提出されましたが提議は拒絶されました。

さらにシラードは、一九四五年七月一七日にも倫理的観点から日本への原爆使用に反対する大統領への請願書を独自に起草し、冶金研究所の科学者に回覧して七〇人の署名を集めました。しかしこの請願書は大統領がポツダム会談で海外にいることなどを口実にグローヴスに差し止められ、八月六日前にトルーマン大統領に届くことはありませんでした。

※本記事は、2021年11月刊行の書籍『人類はこうして核兵器を廃絶できる』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。