カイトはクラスで偉そうな存在になっていた。昼休みになると、子分に金を渡しドリンクを買いにいかす。それを見ていたボブは不機嫌そうにカイトを睨んだ。二人の仲にはだんだん亀裂が入り、カイトはボブをよそ者扱いするようになった。そして時々ボブに向かって「おい、よそ者」と口にするようになった。

ボブは相手にしなかったが、ある日、ボブのロッカーに落書きがされていた。“よそ者は帰れ!”と書かれていた。カイトがやったと確信はあったが、証拠があるはずもなく、泣き寝入りするしかなかった。

カイトは外顔が良く、女子にもジュースをおごったり、自分の父親の別荘に招待したりと結構人気を集めていた。そしてボブを仲間外れにし、陰で彼の悪口をみんなに聞かせていた。

二学期も終わり学年末も近づいたある日、ボブは担任の先生に呼び出された。カイトがボブから嫌がらせを受けていると言うのだ。そんなはずはない、むしろ嫌がらせを受けているのはボブの方で、先生にも話したが取り合ってもらえなかった。

学年末に近づくにつれカイトの嫌がらせはエスカレートしていった。ボブのカバンにも“よそ者帰れ! 税金泥棒”などの落書きがされた。

そしてやっと2年生になる時が来た。ボブは2年A組でケントと同じクラスになったのだ。だが、カイトも同じ教室にいた。彼は不機嫌そうにボブに近づきいつものように「よそ者出ていけ」とつぶやいた。

それを聞いていたケントがカイトに掴みかかろうとすると、ボブが止めに入った。

「ケント、やめとけ」

するとカイトは二人に向けて、

「これだからよそ者は嫌なんだ」と言い放ち教室を出ていった。

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※本記事は、2022年2月刊行の書籍『ミスタープレジデント』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。