火の使用の開始

火を使ったという最古の証拠は、ケニアのツルカナ湖畔コービ・フォラ(図1参照)の炉床であり、一六〇万年前です。

[図1]アフリカの猿人・ヒト化石の発掘場所

「人類のゆりかご」と言われる南アフリカのスワルトクランスの遺跡(図1参照)からは、石器とともに燃えた骨が出土しています。このスワルトクランス洞窟には一二〇万年前の火の利用跡が残されています。

北京原人は、これらと比べるとずっと後の時代ですが、火を使用していました。ホモ・エレクトスは雷や野火など、なんらかの方法で火を手に入れたと考えられています。この火を持ち帰り、自分たちのものとしたとき、ホモ・エレクトスを取り巻く世界は一変したことでしょう。

火の利用は、夜行性の肉食獣が活動する危険に満ちた夜に敵を遠ざけ、ホモ属を解放しました。そして、ライオンやトラを追い払うために火を使用しているうちに偶然に焚き火で料理ができることを発見したのでしょう。

ホモ属はもともと木の実や果実や葉っぱ類を食べていました。それがホモ・ハビリスの時代から肉食もはじめたのですが、肉の獲得は安定性に欠けるので、食物が少ない時期や狩りで獲物が獲れなかったときに、どう対処するかが、生き残るために最重要のことでした。

食物欠乏時には乾燥地帯に生えている地下根茎(芋など)やドングリなどの木の実に依存したでしょう。この火の使用によって、この根茎類も木の実も焼いて食べれば、栄養豊富でおいしい食事になることがわかりました。それがわかると、他のものも真似(まね)てやったでしょう。つまり、「創造と模倣・伝播の法則」で、火を使って食物を料理することも広まったのでしょう。

※本記事は、2022年2月刊行の書籍『アフリカのホモ・サピエンスが天皇制国家・日本を建国するまでの歴史』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。