火星基地から地球に打電。

「火星に人工の遺跡らしき物発見、火星人が作ったと思われる地上絵らしき物発見」

慌てふためく火星基地に対して、当然地球基地でもこの報告をにわかに信じることができず。

地球と火星の時差でおよそ10分後「何をバカなこと言っているんだ、今日はエイプリルフールじゃないぞ、火星の放射能に頭をやられたんじゃーないの」と、まるで信じようとしない。

火星からの報告を本気にしない地球本部に、写真を送り報告は続く。「冗談ではありません、本当に紛れもない人工物です。映像を送ります映像を送ります」探検隊は突然の遭遇に気が動転して、自分が何を報告しているのか何から報告していいのか、大混乱である。

鳥のような絵柄は、扇の外側に今でも飛び立つように精巧に描かれている。やはり大きさをそろえた加工石が整然と並び、石の内側は30センチほど掘り下げられて溝がつけられており、飛び立つ方向に頭、手前の扇の方に足が描かれ両翼は大きく羽ばたいている。まさに精巧に描かれた芸術作品である。

一方、1人で四角い田んぼのような絵柄が並ぶ場所に出かけた地質学者のアヤ。

アヤが火星の田んぼと言われていた所で見たものは、四角い大きなパネルで一辺が20メートルほどある。

「エ。これなに、田んぼではないよ、パネル」アヤも目の前に現れた人工物に思考が止まる。

アヤは恐る恐るそのパネルに近づく。砂の中に沈みかかってわずかに地表に浮いているもの、下の足が朽ちて地面に倒れかかっているものもあるが正確に並んでいる。パネルの上には黄色と赤い砂と、いくらかの石が積もっているが、明らかに何かの工作物である。そのパネルの上に薄く降り積もっている砂を、アヤが恐る恐る手で払った。

「隊長、アヤです」と驚きの声を上げる。

斜めからあたる太陽の鈍い光をパネルが跳ね返す。

「隊長、これ太陽光パネルです。この四角いもの、太陽光パネルに間違いありません」

アヤは自分たちが基地で使用しているのとほとんど同じ太陽光パネルが出てきて言葉を失う。

積もった砂ぼこりを手で払いながらパネルが並ぶ中を次々と回る。左端に接続箱やキュービクルのような設備がうず高く積もった砂の中から見えてきた。

「隊長、このパネル今でも使えそうです。表面はまだ輝いています。なに……なに……なんで……どうして、こんなものがあるの……」

アヤはパネルの左端から電線のようなコードが伸びているものを発見。

「電線が山の方向に延びています」

ケンは「アヤ、そのパネルから伸びている電線に沿ってどこに行っているか調べてみてくれ」と、指示を出す。

ケンの頭の中ではその線をたどれば施設にたどれるとの思いである。

「了解、線をたどってみます。でも何か怖いわ、何か出てこないかしら」と、不安に駆り立てられるが、アヤの好奇心はどんどんと深まる。

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※本記事は、2021年12月刊行の書籍『リップ―Rep―』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。