(2)ヘンダーソンの基本的ニード

基本的ニード:ヘンダーソン(V. Henderson, 1897~1996)

ヘンダーソンは看護の対象を「健康人・病人・終末期とあらゆる健康レベルの人も含む」と定義し、看護師の援助を必要とする人は「体力・意思力・知識」のいずれかが不足しているために適切な行動が取れないとした。そして、「その足りない部分の担い手」になることが看護の機能であると述べ、その人が自立できるように仕向けることが看護援助であるとした。

ヘンダーソンは、看護を必要とする人の基本的ニード(欲求)を「14の要素」として「人間のニード論」を展開し、人間の基本的ニードに対応するように患者の行動を援助するのが「基本的看護」だとした。以下が基本的ニードである。

1.正常に呼吸をする

2.適切に飲食をする

3.身体の老廃物を排泄する

4.身体の位置を動かし、またよい姿勢を保持する

5.睡眠と休息をとる

6.適切な衣類を選び、それを着たり脱いだりする

7.衣類の調節と環境の調節により体温を生理的範囲内に維持する

8.身体を清潔に保ち、身だしなみを整え、皮膚を保護する

9.環境のさまざまな危機を避け、また他者を傷害しないようにする

10.情動、欲求、恐怖、意見などを表現して他者とコミュニケーションを持つ

11.自分の信仰にしたがって礼拝する

12.なにかやりとげたという感じをもたらすような仕事をする

13.遊ぶ、あるいはさまざまな種類のレクリエーションに加わる

14.正常な発達と健康につながるような学習をし、発見をし、好奇心を満足させる、また利用可能な保健施設を活用する

2)食について

食事摂取がもたらす意義をアセスメント(栄養状態、食事摂取基準、食事に関する分析、水・電解質)から考え、さらに食生活の支援について確認する。特に、援助をするうえでの安全性から誤嚥予防について知る。

(1)食事摂取について

生理的ニードは生命体としての必要度が高い欲求であるため、生命維持が必要な場合は、医療処置として高カロリー輸液による大静脈からのカテーテルの挿入や口や鼻から管を入れたり(経管栄養法)、胃瘻造設といった方法がとられる。口からの食事が困難であっても生物学的に必要とされるカロリー、栄養素と水分の摂取は、医療技術によって可能である。

しかしながら、食の重要性は生理学的に必要とされる物質の摂取のみではなく、口から食べるという刺激や楽しみ、食事を囲むことで人との交流や親睦といった経験がある。また、食べるための動作がスムーズでない場合、食欲を満たせずに食べる意欲をなくすことがある。口腔や嚥下(飲み込み)に異常がない、胃腸系に問題がないだけではなく、食事の行動(摂食動作)が自立していることも大切である。

【前回の記事を読む】恐ろしい…「死にゆく過程の5段階」家族はどう向き合うべき?