第2節 食事と排泄に関する知識と援助を知る

ヒューマンケアは生きていくために必要な知識や技を活用するが、私たちが生きるためにはニードが満たされることが必要だといわれている。この欲求(ニード)について、心理学からはマズロー、看護学からはヘンダーソンを紹介する。そのうえで、生理的ニードと位置づけられる「食事と排泄」の知識を確認し、日常生活において快食・快便の大切さを再認識する。

食べる・排泄する、といった普段は何気なく行い「空腹を満たす・気持ちよく排泄物を出す」といったことも、他者の援助で食べたり、排泄したりすることは生理的ニードを心おきなく満たせるものではない。また、例えば家族に対して食べさせる・排泄を手伝うといった援助は専門的知識や技術がなければなかなかうまくいかないものである。

生理的ニードである食事と排泄について理解を深めることは、自分自身の生活を見直したりあるいは援助をしたりするときに役立てられるものである。

1)欲求(ニード)について

(1)マズローの欲求段階説

生命の維持において生理的ニードを満たすことは重要である。マズロー(A. H. Maslow、心理学者)の欲求段階説(1954年)によって明らかにされた「生理的ニード」は最も低位の第1階層に位置づけられ、食事、排泄、睡眠などの本能的な欲求である。5つの段階に階層化されて示されたそれぞれの段階の欲求は、第1階層の欲求が満たされた後に第2階層の欲求が表れるとされた(欲求段階説)。

生理的ニード:食事、排泄、睡眠などの本能的な欲求

安全のニード:安全・安定・依存・保護。また恐怖・不安・混乱からの自由、保護の強固さ、秩序・法などを求める欲求

所属と愛のニード:所属と人々との愛情に満ちた関係への切望

承認のニード:自己に対する高い評価、自己尊敬・自尊心、他者からの評価

自己実現のニード:自分がなりうるすべてのものになろうとする願望