管理職手当は部下のため ~ポケットマネーで現ナマ支給~

学校経営上の重要項目の一つに募集対策がある。中学校へ出向いて生徒・保護者向けに高校の説明を行ったり、塾や予備校にパンフレットを持参して宣伝・広報活動を行ったりと、近頃は、かつての都立高校では想像できないような“営業”を行い、私学並みの募集活動をどの学校でも行うようになってきた。

その先頭に立ち、営業活動を行うのも管理職の役目の一つである。学校によっては、校長が前面に出て行くところと、副校長の場合と様々である。私のところは副校長が前面に出ることになっていた。そして、外部での合同説明会ともなると、副校長を筆頭に教員を10名以上派遣する場合もあった。私はその都度、弁当やお茶代として、一人当たり1000円の“現ナマ”を副校長のポケットマネーで対応した。また、説明会後の反省会も、副校長として“一席”設けるのが常でもあった。

ところで、夏季休業中には、大抵の都立高校では部活動の合宿を行うことが一般的である。当該校は、加入率ほぼ100%と、部活動が大変盛んな学校で、毎年、多くの部活動が合宿に参加していた。

前任者の話では、例年、校長と副校長が“陣中見舞い”と称して、マイカーであちこちの合宿先に出向いて視察を行っていたようであった。私は管理職として、何日も校長と副校長の二人ともが同時に職場を離れることは、危機管理上において如何なものかと考えていた。加えて、同じ金を使うなら、最も効果的なやり方は何かを思案し、出た結論が“現ナマ支給”であった。

そこで、各部活動顧問に対し、一律5000円の餞別を配り、生徒のジュース代にでもしてくれと渡した。合宿参加のすべての部活に対してであったので、相当な額になった〈:この時ばかりは額が額だけに校長にもスポンサーになっていただいた〉。

そんな中、数名で参加する小規模な部活動があった。その部に対して「人数も少ないし、まあ、いいか」、そんな軽い気持ちで、現金支給を配慮しなかった。ところが、夏季休業も終わろうとした8月下旬、顧問がすごい形相で副校長席にきて、「うちの部活は無視された」とクレームをつけてきた。それにはさすがに驚いたが、丁重に謝して、遅ればせながら“支給”する羽目になった。

また修学旅行の引率責任者は、学校によっては、校長の場合もあるが、私が勤めた学校は、副校長の役目とほぼ決まっていた。そして修学旅行の反省会は、引率責任者である副校長が持つのが常であったが、さすがにその時は、予め校長の方から“軍資金”が提供された。

他にも、教職員の慶弔も、かなりの出費につながり、重なる年は懐にも響いた。こうした費用の出処は管理職手当と私の小遣いからであったが、このような対応の背景には、某プロ野球監督の「部下(選手)の育て方」を参考とさせていただいた面もあった。

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