滅多に飲みに行かない人が、何故かあの日イレンダに居た。しかも初めての店に。成田さんは私の嫌いなタイプだったせいか、一段と疑いが増した。

こんな同僚の話を聞けば、もう少し成田さんの事を知りたくなるのは当然の事。だが当ては無い。ぶらぶら展示会場を歩いていると、監視カメラや防犯カメラを展示しているブースが在った。

現在はもはや監視社会だ。防犯カメラはすでに一般家庭でさえ取り付けている。精度も上がり、年々安くなっている。日本だけでも五百万台のカメラが有るそうだ。なんと中国は二億台設置され、国民を監視していると言われている。犯罪の抑止力に成る。抑止という事は、計画的な犯罪や潜在的な犯罪者の事に成る。突発的な犯罪は減らない。だが、解決に繋がる証拠には成る。

今の犯罪者は、そこら中に有る監視カメラや防犯カメラの目を、どうやってくぐり抜けるかも考えなければならない。よっぽどの知能犯でなければ難しくなった。

今回の犯罪者も、いずれ監視カメラを調べられる事は分かっているはずだ。どうやってそれをクリアしたのか、まだ分からない。行き詰まった。イレンダで美香チャンと少し話でもして帰ろうかと思った時、自分の馬鹿さ加減に気がついた。

なんだ、まだ美香チャンから話を聞いてなかったじゃないか。成田さんは初めての客だ、無視するはずが無い。おそらく常連に成って貰おうと、愛想良く何か話しているに違いない。

イレンダに飲みに行くのに、別に口実など要らないが、なんとなく嬉しい気分に成った。

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