17世紀後半には、多くの生物学者が顕微鏡を用いて植物や動物の細胞を丹念に観察し、細胞の種類とその構造やはたらきが究明されたのです。

1658年にスワンメルダムは、カエルの体内を流れる赤い液体と思われていた血液は、赤血球という粒であることを発見し、1661年にマルピーギは、血液が循環していることを観察してマルピーギ管と腎小体を発見しました。

さらに、解剖学の発達にともなって生物学は発展し、様々な生体組織が顕微鏡で観察されるようになって、カエルなどの肺胞を観察して血管を流れる血液のはたらきが研究されて、赤血球は道路を往き来する荷馬車のように血管を通って生命活動に必要な物質を運ぶはたらきをしていることが究明されました。

さらに、血管は体中のいたるところにつくられていて、血液は動脈、静脈と毛細血管を通って絶えず循環し、その中の赤血球が酸素や養分を体の隅々まで運び、不要な炭酸ガスや老廃物を運び出すという生理作用の仕組みが解明されたのです。

科学の研究には、微細なものまで観察できる眼が重要で、顕微鏡は、生物学や医学だけでなくすべての科学分野の発展に貢献しました。多くの科学者によって改良が加えられて、現在の収差が少なく倍率や解像度の高い光学顕微鏡がつくられたのです。

さらに発展して、1932年に電子顕微鏡が発明されて、光学顕微鏡では見ることができなかった超微細なウイルスまで見ることができるようになり、現在は、電子顕微鏡がウイルスの研究に欠かせないものになっているのです。

※本記事は、2022年4月刊行の書籍『基礎からわかるウイルスの脅威』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。