第3章 情報認知

5 空間の統一性を感じさせる〈ライブ表現〉

統一性の損失は没入状態を解いてしまう

映像は一定の空間をカメラで切り取り、断片的に見せていますので、視聴者は画面外の状況を認識することはできません。カットの切り替わりで物の位置、人の動作、画面の色、光が変わっていると統一性を感じられず、没入状態が解けてしまいます。そのためカットが切り替わっても同じ空間が維持されていると視聴者に感じさせる必要があります。

撮影原則「イマジナリーライン」を越えない

イマジナリーラインとは2名の登場人物を結んだ架空の線です。対話シーンでそれぞれの1ショットを撮影する場合は、お互いが向き合っているように撮れば違和感はありません。

しかし、カメラがイマジナリーラインを越えて撮影をした場合、登場人物は同じ方向を向いているように見えるため、誰と話しているかわからなくなります。このような混乱を避けるため、撮影時はイマジナリーラインを越えてはならないというのが業界標準の認識です。

写真を拡大 [図1] 「イマジナリーライン」を越えない
写真を拡大 [図2] カメラC→カメラBイマジナリーラインを越えない撮影
写真を拡大 [図3] カメラC→カメラDイマジナリーラインを越えた撮影

色を統一するカラーコレクション

編集時にホワイトバランス(色温度)や輝度(明るさ)を適正値に補正する効果をカラーコレクションといいます。同じ空間や被写体を撮影しているのに、カットが切り替わるたびに色が変わっては映像に没入しにくくなります。

撮影時に同じホワイトバランスで撮っても、カメラの個体差や、天候などによる光の変化で色がずれてしまう場合は、カレーコレクションで補正する必要があります。

自然なライティング

撮影において光は、画質や雰囲気に影響を与えるとても大事な要素です。しかし臨場感が重要なライブ表現では、照明の存在を意識させない自然なライティングが求められるため、映画などでは街灯や月明かりなどに似せた地明かり風の照明が作り込まれます。時には照明を使わないことが最高のライティングとなる場合もあるのです。

6 〈デザイン表現〉の効果

目的は情報密度を高めること

ライブ表現が映画の考え方をベースとした「時間と空間の体験」であれば、デザイン表現はその名のとおりデザインの考え方をベースにした「時間と空間の設計」です。その表現の幅は広く、情報密度の高い広告動画やダイジェスト、イメージ性の高い創造的表現などに用いられます。

ライブ表現が臨場感を出し、登場人物に対する視聴者の感情移入を促すことを重視した表現であるのに対して、デザイン表現は短い時間で情報を効果的に認知させる機能性とビジュアルの装飾性、アイデアの新規性を重視した表現が多いのが特徴です。刺激的で斬新な映像表現は視聴者の意識を惹きつけ、情動喚起を促します。

また、むだを削ぎ落とした編集により情報密度を高め、短い時間で情報の認知と理解を可能にします。その一方で作為的な表現が多くなるため、内容に対して感情移入しにくいデメリットも、もち合わせています。

〈映像表現におけるデザイン演出の種類〉

・時間のデザイン(構成・編集)
・空間のデザイン(撮影・照明・美術・衣装・ロケーション)
・画面のデザイン(画面加工・モーショングラフィック・色演出)

〈デザイン表現におけるメリット・デメリット〉

・機能的で効率的な表現は短時間で大量の情報を伝えられる
・装飾性と新規性の高い表現は情動を喚起させる
・臨場感が弱くなるため感情移入を促しにくい・脳への負担が大きい

※本記事は、2020年5月刊行の書籍『伝わる映像 感情を揺さぶる映像表現のしくみ』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。