第Ⅱ部 人間と社会における技術の役割

Ⅱ-4 技術と法

1.技術を扱うには法律が必要

技術を社会で使うためには、法律が必要です。法律とは何か考えてみましょう。人間は、社会集団のなかで生活しています。決して一人だけで生きているわけではありません。

人間が社会集団のなかで生活する上で必要なルールを作ります。これが法律です。法律は、社会の進歩とともに発展しているものです。

かつて王様が支配していた社会においては、王様の作ったルールが絶対でした。封建時代から民主主義の市民社会になって、現代の法が出来上がってきました。

図表1のように、そのときまでの社会のなかで作り上げられてきた倫理や価値観、通念に基づいたルールが法律です。したがって、国によって歴史の違いや民族の違い、政治体制の違い、あるいは宗教の違いがあるため、各国の法律は異なっています。国によって法律が異なるため、国際的な問題に対するルール作りも難しいのが現状です。

[図表1] 法律とは

日本における法律に沿って、技術と法律に関わる問題について考えてみます。日本における基本的な法である憲法、刑法、民法を図表2に示します。

写真を拡大 [図表2] 憲法と刑法、民法

まず、国における基本原則、こうありたいという理念を示したのが憲法です。日本国憲法の基本原則は「国民主権」、「基本的人権の尊重」、「平和主義」です。基本的な理念は、個人の尊重です。

つまり、国の主人公は国民一人一人であり、国民は一人一人が個人として尊重されなければならないという理念です。この憲法のもとに、大きく分けると刑法と民法が作られています。

刑法は犯罪を処罰して、犯罪が行われないようにするための法律です。一方、民法は対等な人同士の契約や問題について、権利と義務を決めた市民の法律です。

刑法は犯罪を処罰する法律なので、犯罪とは何かが問題になります。責任を持つある人が違法であると知りながら、わざと(故意に)ある行為をし、その実行行為の結果が他人に危害を与えた場合に犯罪となります。

しかし、故意に行わなくても、必要な注意を怠って(過失)他人に危害を与えてしまった場合には、その行為者に対する処罰を設けるようになりました。また、過失かどうかが明確でなくても、販売した商品が他人に危害を与えてしまった場合にも、製造者が責任を持つようになりました。

民法は、基本的には人と人との間の契約のルールを決めたものです。ある約束事をしたら、それについての権利と義務が発生します。商品を購入する約束をしたら、購入者にはその商品を受け取る権利が発生するとともに、販売者に代金を支払う義務が生じます。

逆に、販売者には商品を渡す義務が発生するとともに、代金を受け取る権利が発生します。このような、お互いの権利と義務の関係を規定したものです。

お互いの契約は、基本的に自由に結ぶことができます。約束を破ったりして損害を与えた場合などは、賠償責任が発生します。しかし、自動車事故などのように、直接の契約関係がないのに損害を与えてしまうことがあります。このようなときも、賠償責任を決めているのが民法になります。

※本記事は、2019年4月刊行の書籍『人と技術の社会責任』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。