合気道道場

翌日、夕方五時を過ぎたあたりから母親に連れられた子供たちが、集まり始めた。五時三十分から少年部の稽古が開始される。

短パンにアンパンマンのプリントがされた白のTシャツを着た仁、ブルーのジャージ姿の清はすでに将来のおやじ姿を醸し出している。赤のフリルのついたスカートと水色の水玉模様のシャツの結衣は道場に入るなりくるくると回り頬に指を立て可愛さをアピールしている。

濃紺の幼稚園の制服を着た舞、ジーパンに黒のTシャツを着た優はイケメンで将来の風貌が想像できる。眼鏡をかけてピンクのシャツとスカートを身に着けた恵子は将来、学校の先生になりたいと夢を持っているようだ。

子供たちにも個性があり、既に、それぞれの人格が漂い始めている。

仁は生真面目で脱いだ靴を揃え、シャツやズボンをキチンとたたんでいた。反対に清は靴を揃えるようにと中村に注意されたり、シャツやズボンを仁のバックの中に入れようとして仁に怒られていた。結衣は、靴は揃えたのだが、シャツが裏向きにたたまれており、生来のあわてんぼうがにじみ出ていた。将来はお父さんの後を継ぎ、会計士を目指しているようだった。

舞は几帳面な性格で身支度をキチンとこなし、結衣を注意してシャツのたたみ方を直させていた。恵子は子供たちのまとめ役で、全員の様子を見て準備ができたと中村に報告をしに行った。優は少しカッコをつけポーズを決めていた。将来は俳優になりたいと希望している。

子供たちも小さいながらに夢があり、親にも友だちにも話しているようだった。

「整列、並んで、正座、黙祷」

中村の声で全員が正座し、眼を閉じた。

「眼を開けて、準備体操始めます。結衣ちゃん、お願いします」

「はい、手と足をぶらぶらさせて、一・二・三・四、五・六・七・八、二・二・三・四、五・六・七・八、次、腕を回して」

結衣が声をかけ、子供たちがそれに続く。

「今日も基本からやります。右半身構え、直れ、左半身構え、キヨ、左だよ、直れ、右半身構え、直れ、臂力の養成一、一、二、ほらジン、遅れてるぞ、キヨ、へばらない」

「キヨちゃん頑張って、もう少しだから」

結衣は音を上げそうな清に声をかけた。

「だって、疲れたし~、お腹すいた」

「ごはん食べたでしょう? もう食いしん坊なんだから」

「キヨちゃん頑張れ、もう少しだから」

仁も清を励ましていた。泣き出しそうだった清も結衣と仁の励ましで頑張ることにしたようだった。舞と恵子も遅れまいと必死に汗を流しながら頑張っていた。いつの間にか子供たちの間にも人間関係ができつつあるようだった。一人、一人が自覚を持ち、少しずつではあるが前に進みだしていた。

身に付けた力を間違った方向に使うことにはまだまだ注意しなければならないが、子供たち自らが身の回りを注意しなければならないほど世の中が荒んできているのだろうか? 自分たち親の世代がもっと子供に意識を向け注意しなければならないと中村は考えていた。