第一章  ヨーロッパでの生活

アメリカに渡ってからの少年時代

ミルキーからみんなにいつものように指示が出された。必ず二人一組で行動する事、立ち入り禁止区域には近づかない事などきつく言いつけられた。

ボブは谷底を望める少し離れた展望台に陣取った。そこは大きな崖の上で前には立入禁止のフェンスが張られているが景色は最高だ。そして何より谷底のワニが見える絶好のロケーションだ。だが、彼が組まされたのはあのサーマンだった。彼は絵など描くはずもなくただウイスキーを飲んで時々大好きなサラミをかじるのであった。そしてボブの元へやって来てこうつぶやいた。

「おいよそもん。下を見てみろワニが餌を探してるぞ、お前下の川に降りて泳いでみろ。生きて帰って来たら、ご褒美に肉を食わしてやるぞ」

その気もないくせに大笑いしてサラミをほおばりウイスキーを飲んでいた。そしていつものようにニヤリと笑いながらボブを見つめていたのだ。

30分も経っただろうか、サーマンはご機嫌にウイスキーを飲んでサラミをくわえながらすっかり眠り込んでいた。ボブは辺りを見渡すと、切り立つ山々と谷底にいるおおきなワニが目に飛び込んできた。そうこうしてるうちに、マイケルとケントが現場に合流した。するとボブが彼らの耳元でつぶやいた。

「ワニの餌にしてやろう」

さすがに驚いた二人だったが、ボブが巨大なサーマンの足を引っ張りピクリとも動かないのを見て自然と手伝い、掛け声を上げながら巨体を少しずつ引きずっていった。

そして見晴らしのいい展望台のはしまでやって来た。だがそこには、柵が張ってあり、その外側にはさらに転落防止用のネットが張ってあるのでとても落とせない。

そうこうしてるうちにサーマンが目を覚ましふらふらの足取りで柵にもたれ掛かっていた。1メートル90センチの大男だが三人は思いっきりサーマンへ体当たりした。すると、サーマンの体は柵を乗り越えて下のネットに引っかかった。